約 23,555 件
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html
カテゴリー 笹荻 一人ぼっちの現視研 家出少女・荻上 家出少女・荻上 続編 荻上さん、入院する 夏コミ前の話 笹荻 笹荻の帰省 巫女神楽 めぐりあい、アキバ いくらハンター いくらハンターⅡ いくらハンターⅢ 雪の華 華風 そして、すれ違い・・・ 君に読む物語 夢であるように リライト ある朝の風景 ある朝の風景-おまけ- 五月雨 If I ever hear you knocking on my door 8823 パンを焼く 影踏み ランプ ランプ-続き- テーブルの距離 テーブルの距離─おまけ─ とりかえばや物語 嬉し涙 いつか見た夢の続きを 事後 事後・side荻上 甘い話 指 不機嫌 なごり雪 手をつなごう お家にかえろう バレンタインデー あなたに会いたくて アルバムを覗けば 普通の日 笹荻BADEND ヨモギ らびゅーらびゅー 短編集 夕立 不快指数 スケッチブック ザクロ promise かなしいライオン 罪と罰 あつい話 『マル。』 『はじめてのおつかい』 スレスレ? 二つの幸せ やわらかい月 月を見上げて 逃げ道 『カエデ』 気付いた時が恋のはじまり きゃんでぃ☆デート 底冷え TOP
https://w.atwiki.jp/kattenisrc/pages/2253.html
花中島マサル(セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん) 数々の名言で知られる作品の主人公。アニメのOPも必聴。 主役らしくセクシーLv6~9と高めから最大まで成長するほか、 チャームポイントで初手からセクシーコマンドー使用可能、 弱点である前フリ技の不発でも心眼により強引に当てられる、 挑発で無理やり射程内に呼び寄せることもできるなど、 セクシーメイトとして一流の能力を持つ。 他にも耐久が少し高めで抵抗力Lv1もありエリーゼ不発時も少し安心で、 Lv1脱力という特徴もありフォルダ内ではかなり使いやすい。 なお、超回避Lv1も持つが、手動で素の回避は低めなので忘れていい。 可能なら特殊効果発生率の補強が第一だがめったに存在しないため、 普通はセクシーコマンドー使用回数確保のためEN強化か、 不発時の安定性補強のために耐久強化が選択肢になる。 セクシーコマンドー(セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん) 作品タイトルにもなっている格闘技の総称。 達人であろうと隙を突くことで倒せるという理念のもと、 隙を作りだすことに特化している。 詳しくは原作を読もう。 データでは『エリーゼのゆううつ(以下エリーゼ)』からの追加攻撃で 『セクシーコマンドー(以下コマンドー)』が発動するようになっている。 (※一部例外あり) 特徴が複数あり、箇条書きにすると 『セクシーコマンドー全体』 エリーゼ(&放課後キャンパス)からの追加攻撃でコマンドーが発動する。 『エリーゼのゆううつ』 射程1。気力105。 先SL0精視属性。 CT+15 & セクシーLv×2%増加。 『セクシーコマンドー』 エリーゼから自動発動する追加攻撃。 射程1。EN30。気力105。 命中-99(エリーゼのSL0発動が命中の条件になる) 基礎火力1500+KL0+オR(セクシーLv×50上昇)。 つまり、コマンドーの火力はほどほどに高く使い勝手も良いが、 必中がない限りコマンドーの命中はエリーゼのクリティカル頼りになり、 安定感に欠ける、ということになる。 また、射程1なので射撃中心の相手には防戦一方になるのと、 EN30と比較的大きく連射に不向きなのが弱点。 肝心のSL0発動率だが、主役のマサルさんが技量166、最大セクシーLv9なので、 技量130ザコ=81%、技量150汎用=41%と雑魚にもあまり安定しないが、 技量200ボス=16%と大物にもワンチャン狙えるようになっている。 下手をすれば雑魚にも苦戦するが、上手くすればボスも無傷で倒せると、 ある意味で非常にらしい性能をしている。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/8547.html
726 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 18 59 32 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [220/297] できました。ご笑納くだされば幸いです 中島/川西 三式艦上戦闘機「陣風」 全長:10.2m 全幅:12.5m 全高:4.5m エンジン:プラットアンドホイットニーR-2800-34W(日本名:「木星34型」)×1 プロペラ:ロートル社式3.84m径4枚プロペラ 出力:離翔2400馬力 定格2100馬力(高度6100m) 速力:最大686㎞/h(高度6560m) 航続距離:正規1710㎞ 150ガロン増槽あり2560㎞(戦闘航続半径950㎞+全力40分) 武装:ホ5 20ミリ機関砲×6 【解説】――中島飛行機が開発した帝国海軍の主力艦上戦闘機 1943年初頭より機動部隊に配備が開始され、それまでの零式艦上戦闘機と急速に置き換えられたことから大戦中期の帝国海軍の主力戦闘機とされる エンジンは、ライセンス生産された当時最新のR-2800-34Wエンジン(開発中だったXF‐7‐Fなどと共通)を採用し、当時の戦闘機としては最高レベルの出力を確保し、プロペラは英国ロートル社からライセンス生産したスピットファイアと共通のものを採用 この組み合わせにより、試作機は最大711 #13214;/hに達する快速を誇ったが、パイロット損耗を抑えるべく追加された防弾装備や主翼折り畳み機構の追加によりやや速度は低下し高度6560mで最大686 #13214;/hとなっている 武装は、零式艦上戦闘機用のエリコン社製改良型に替えて陸海軍共通の軽量20ミリ機関砲(両軍とも20ミリ以上は砲と呼称を統一)ホ5を6門搭載。 イスパノ社製機銃ほどではないもののスピットファイアや米国のF4Uを上回る大火力となった 三菱の「烈風」と異なり太平洋においても使用を考慮して設計されたことから航続距離は長大で、英国製ペーパータンク(300ガロン)搭載時には3000キロにも達する ただし艦上運用上は150ガロン搭載の方が一般的であった 本機の開発に際して帝国海軍当局は完全に米国技術導入のために開き直ったとも称される態度で臨んでおり、エンジン製造ラインや艤装の製造ラインも米国から製造機械ラインを購入している さらに多国籍での運用も考慮して人間工学的な配慮がされた操縦席回りはそれまでの日本機からすると雲泥の差といわれる居住性が確保されていた 特に艤装において米国からのライセンス部品が多用されたことは現場において非常に好評であり、のちの戦闘機のスタンダードとなった 本機の開発は中島飛行機の倉崎重蔵技師と川西飛行機の菊原静男技師が指名され共同で行われたことに特徴があるが、二人はまるで旧知の間柄であるかのようにスムーズに作業をこなし、周囲を驚かせたという なお本機は、のちに国産のハ‐44こと土星発動機(2800馬力)に換装され(陣風改)、1947年の終戦時にあっても二線級部隊に一定数が配備されていた 733 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 20 56 29 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [221/297] 【開発】――1940年、バトルオブブリテンを辛くも乗り切った帝国海軍はひとつの困難に直面していた 傑作機となった零式艦上戦闘機の後継機問題である 幸いにも、まるで図ったかのように三菱の堀越二郎技師は機体各部とエンジンを強化した22型(史実52型)と、エンジンを1500馬力級の「金星」発動機に換装した33型(史実64型)の構想を提出していたことから当分はこれで十分ではあった だが、それに続く新型戦闘機の開発において困難が生じた のちに政財官において「従軍派」と呼ばれることになる欧州戦線従軍組の人々が前線から届ける要望と、中央の要求に乖離が生じていたのである 欧州戦線からは、バトルオブブリテンにおいて英国製スピットファイアに惚れ込んでしまった士官級搭乗員たちからまず加速力と最高速力を確保し、軽快な運動性も有する、いってみればスピットファイア強化型が要望されていた 場合によっては英国製の機体の導入も考慮すべきと申し添えて 帝国海軍としては、太平洋上でも艦上機を使用することから欧州戦線に比べれば長大な航続距離が必須である。だが当分の間日米戦の脅威など存在していない現実からある程度妥協もやむなしと考えられ、1940年7月、三菱を、もっというと零戦の堀越二郎を指名して15試艦上戦闘機の発注が行われた だが彼らは堀越二郎という男を見誤っていた いつの間にか英国メーカー各社に伝手を作っていた彼は、英国が次期戦闘機用に開発している新型液冷エンジン グリフォンの存在を嗅ぎつけておりその人脈の限りを尽くして試作品を日本に持ち帰ってしまっていたのだ 英国としても本国が再び爆撃を受けた場合に備えて日本本土に製造ラインを確保するというのは魅力的な提案であり、帝国海軍当局が気付いたときには既に三菱と英国メーカーの間で覚書が交わされる状態にあったのだった 海軍航空黎明期に欧米製の液冷エンジンを輸入して使用経験があった海軍当局は少々顔をしかめた 海外製はもとより、国産化された液冷エンジンは油漏れやノッキングなどのトラブルを頻発させ、整備面で大幅に問題を抱えていたからである 「とてもいやな予感がする…」 空技廠の和田操廠長がいみじくもこういった予感は当たっていた 「誰だァ!こんな機体作ったのは!!」 横須賀海軍航空隊から海軍省に殴りこんできた担当者は開口一番そう叫んだという 彼らが試験的に購入し運用していたのは、英国海軍のシーファイア艦上戦闘機 その整備性は控えめに言っても最悪であり、特に帝国海軍機動部隊で運用するなど考えられない代物だったのだ 海軍のトラウマはさらに強化された だが、堀越二郎は抜け目がなかった なんと彼は英国海軍を抱き込んでいたのだ 英国海軍のイラストリアス級空母のエレベーターサイズは特に横幅わずか6.8m。バトルオブブリテンで高性能ぶりと長大な航続距離から防空戦闘における救世主となった零式艦上戦闘機は運用不可能だった そのため、英国海軍は主翼の折り畳み機構追加を要望し、そこに堀越は海軍の次期艦上戦闘機計画を匂わせたのであった 堀越としては善意の行動であった 当時英国海軍は新型艦上戦闘機を計画しておらず、シーファイア艦上戦闘機は陸上機からの改設計であることから無理が多発していたからである そこで彼は自分の欲望に正直になった 彼はわずか1か月でマーリンの後継、グリフォンを使用した新型戦闘機の構想を練り上げたうえで日英共通戦闘機とする構想を海軍当局に吹き込んでいたのだ 気が付いたときにはもう遅かった 「これを機に帝国海軍でもグリフォンが運用可能なように組織改革を行うべきでは?英米の技術水準に一気に追いつくこれは好機ですよ」 文句を言ってきた海軍省の担当者に堀越はこう告げた 腹が立つことであるが、それは事実だった だがまだ問題があった 堀越らが試案を提出した機体は確かに高性能ではあったし陸上運用すれば素晴らしい戦闘機になることが約束されたような機体だった だが、英国から技術導入されることになった樹脂強化された大容量の紙製燃料タンクを使っても、航続距離はわずか1500 #13214;程度だったのだ 確かに欧州で使用するにはこれでも構わないだろう だが、海軍は北海や地中海のみで活動するわけではないのだ それに、まるで何かの鬱憤を晴らすように一人の設計者に海軍当局が振り回されてしまうのも癪に障る話だった (なお、こうした堀越に代表される態度は戦中の帝国航空技術者やメーカーにほぼ共通している。最後まで帝国海軍はそんなアクの強いメーカーたちに振り回され続けることになるのである) 734 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 20 57 02 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [222/297] そして、和田操空技廠長はいい笑顔でこう言った 「私にいい考えがある」 彼は、元海軍機関大尉であるにも関わらず海軍とは疎遠であったはずの中島飛行機から一人の設計者に白羽の矢を立てた 倉崎重蔵技師 人物としては英国から帰ってきてから奇人変人度を天元突破させた堀越とどっこいどっこいの若手設計者である どこからか和田の個人的な知己を得ていた倉崎はお偉方の前でこうのたまった 「どぅあーいじょうぶ!むゎーかせて!!」 その言葉の通り、倉崎は1940年11月、空技廠に簡単な設計図を持ち込んでのけた 長年温めていたという戦闘機の構想がそこにはあった 英国との関係上、既に仮称「烈風」と呼ばれるようになった三菱案の開発案は中止にできない ひとまず14試局地戦闘機という名目で発注をかけられていた三菱をあてにできない以上、彼らは中島に頼るしかなかった 倉崎は海軍当局が自分も暴走しかねないと危惧しているのを察し、自ら海軍子飼いの航空メーカーである川西飛行機(彼らは英国向け飛行艇の設計と水上戦闘機の開発に忙殺されていた)と空技廠から人員の派遣を受けることを申し出た のちに19試甲戦と呼ばれる帝国海軍最後のレシプロ艦上戦闘機の開発にも関わることになる菊川静男技師がまるで厄介払いされるようにつけられたのはそういったわけだった (彼は水上機でなく陸上戦闘機を設計させろとうるさかった) こうして1940年12月30日、辛うじて15試(海軍昭和15年試作艦上戦闘機)となった機体は開発が開始された この段階で、倉崎が望む馬力を出せるエンジンは存在していなかった 帝国の航空各社がそろって「海外からの技術導入がなければ2000馬力級発動機は1943年頃まで開発不可能」と訴えているのを無視して海軍当局が試作を進めていた小型高性能発動機は試験こそされていたが 「量産性最悪だこれ。こんなのシーファイア運用する方がまだマシだぞ」 といわれる代物であった。文句をいっても 「だからいわんこっちゃない」 と冷淡な態度をとるようになっていた航空メーカー。彼らは彼らで飛行機狂いの政友会総裁でもある中島知久平に感化されて「太平洋横断超重爆撃機Z機」や「最後のレシプロ戦闘機用のレシプロエンジン」の開発に血道を挙げていたのだが今はその話は置いておこう 「なら米国からライセンスすればいいじゃなーい。こっちは空冷だぞ」 倉崎と和田が軽い態度でそう述べたとき、選択肢はもはや存在しなかった 川崎? マーリンエンジン積んだ新型機にかかりきりですが何か? かくて1941年3月、帝国海軍の懇願によりレンドリースの適用を受けることになった航空エンジンとして、P&W-2800シリーズが来日する その安定した高性能ぶりは海軍当局を狂喜させ、すぐさまライセンス生産が決定する 代償として差し出されたのは、帝国海軍が誇る秘密兵器だったはずの酸素魚雷だった (なお米海軍の駆逐艦乗りたちは狂喜した) このような紆余曲折を経て開発が開始された機体は、「烈風」と対になるものとして「陣風」という仮称が早くも内定 1941年8月にモックアップ審査にこぎつけると1942年10月に試作1号機が初飛行する このころになると、関係各所の努力によって日本国内にアメリカ標準のエンジンや艤装品の量産工場が稼働を開始しており、海軍当局は制式採用を待たずすぐさま量産を指示した 1943年1月、「陣風」は初期製造分が欧州戦線に配備 奇しくもそれは英国機動部隊に「烈風」が納入されるのと同時であったという 735 名前:ひゅうが[age] 投稿日:2023/03/27(月) 20 59 18 ID p6280002-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp [223/297] というわけで開発経緯について一本 戦歴については後日…
https://w.atwiki.jp/localdisc/pages/51.html
配信者 このwikiを作った人。 2008年9月23日にニコニコ動画でゲーム実況を始める。 2009年5月頃、生放送を始める。 2010年1月頃、UstreamChecker1次に登録される。 そうやって活動中。 限界集落村長と名乗り、視聴者を村民と呼んだりする。
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/133.html
その四 花言葉【投稿日 2006/01/30】 カテゴリー-4月号予想 1.《えにしだ》(金雀枝、金雀児、Broom) 虚、卑下、清楚、博愛 合宿が終わり、大学に近い最寄の駅で解散してから笹原は直接どこにも寄らずに、 自分のアパートに戻った。惠子も直接実家に帰った。部屋に入るや、荷物をどさ っと降ろして、着替えも片付けもせずに、ごろりと寝っころがった。 (くたびれた・・・。たった三日なのに、なんか色んな事があった気がする) 笹原は携帯を取り出し、受信メールのメッセージをぼんやりと眺めた。 『明日私の部屋に来て下さいませんか?』 『例のものをお見せしようかと思うのですが。』 「明日か・・・」 笹原はつぶやいた。そして思った。 メールが来たときにはドギマギした。しかし今は少し不安と焦燥を感じる。荻上 さん、少し急いていないだろうか? (俺にしてはよくやった方だよなあ・・・) 成り行きとはいえ、告白までもっていったのだ。自分の気持ちは伝えたし、そ の答えも明日わかる。荻上さんの抱えている問題も彼女の口から聞いた。その すべてを理解しているわけでは無いが、彼女の心に少しだけ近づけたとも思う。 なのに何故か胸につかえるものがある。進展の早さに戸惑っているのか?いや むしろ遅かったくらいだ。彼女から見せてくれるというのだ。何の問題がある のか。別に自分をネタにしたやおい本見せられても大丈夫だ。そう思う。しか し・・・笹原は惠子の携帯に電話を入れた。 荻上もまた、笹原が自宅に着いたのとほぼ同時刻にアパートにたどり着いた。荷 物を降ろして、へたり込んで、ふーと一息つく。 (疲れた・・・。休みてえ・・・。ああ、でも部屋片付けなくてなんねなあ・・・) よろよろと疲れた体を奮い立たせて、旅行の荷物を片付け、部屋の掃除を始めた。 本だらけにしているので、少し掃除をさぼると埃だらけになる。 「明日だもんなあ・・・」 掃除しながら荻上はつぶやいた。そして思った。 急ぎすぎただろうか?そんな事は無い。意を決してメールを送った時、これ以 上先延ばしする事は自分の為にも笹原さんの為にもならないと覚悟を決めたで はないか。その決意に変わりは無い。でも・・・。 (どうなるんだろう・・・) 不安がよぎる。怖い。笹原さんがどんな反応をするか・・・。でも彼の気持ちに 応えて勇気を奮わなければならないと荻上は思った。そして携帯を開いて、返信 メールのメッセージを見つめた。 『明日ですね。わかりました。大丈夫です。』 『みんなには言わない方がいいですね?』 『時間は後でメールください』 荻上は明日午後一時にしたいと返信を送った。すべては明日・・・。 2.《わすれなぐさ》(勿忘草、忘れな草、Forget-Me-Not) 実の愛、記憶、私を 忘れないで 笹原は電車を乗り継ぎ、荻上のアパートに向かっていた。駅に降り立ち、以前訪 問した荻上のアパートまで歩いていった。歩きながら、昨日惠子との携帯での会 話を思い出していた。 恵『そうだよ・・・大体それが飲み会で聞いた話の大筋!兄貴、難しいよ、あの 女!あたしにゃ関係無いけど・・・』 笹『うるさいな!余計なお世話だ!』 と言って携帯を切った。 もちろん今日の事は惠子にも言っていない。ずるいとは思ったが、心の準備とい うか、不安を打ち消す為に惠子に詳細を聞かずにはいられなかったのだ。 (聞いて正解だったのか・・・聞かない方が良かったのか・・・) だが自分の胸中にわだかまっていた不安と焦燥の正体が分かりかけてはいた。 こんな事に意味があるんだろうか・・・。自分から言い出した事とはいえ、こ の不可思議な、そして異様な事態に戸惑いを感じていた。彼女の事は好きだっ たはずである。でも結局分かったのは自分が何も彼女の事を理解していなかっ たという事だった。 自分の心と言葉がうそ臭く感じられてきた。就職活動に行き詰まってた時に感 じた気持ちに似ていた。俺、何で彼女の事が好きだったんだっけ?コスプレの 衣装見て、可愛いって意識したから?愛してると言うにはあまりにも成り行き に流されて現実感が乏しかった。 そうこう考えているうちに、とうとう荻上のアパートの前に来た。笹原は心臓 の鼓動が高ぶるのを感じながら、チャイムを押した。 荻上はもうすぐ約束の時間が迫ってくるのにそわそわし始めた。まわりを見渡 し、散らかっているように見えないか気になった。衣装も気になる。おかしく ないか。以前と違って今日は大野先輩はいない。笹原と二人きり・・・。特別 派手で露出の多い服はさけた。でもパーカーとかの普段着では・・・。結局、 藍系のブラウスにいつも通りのジーンズを選んだ。 他人を拒絶し、女性らしさを否定していながら、こんな時に服装を気にする女 心を隠せない自分が嫌だった。でありながら煽情的な服装を避ける自意識過剰 ぶりもたまらなく嫌だった。鑑を見ながら、心がはずむ気持ちを認めるのが嫌 だった。 (これでいいのかな・・・本当に・・・・) あの時・・・笹原さんの事をずるいと言った。でも本当にずるいのは自分では無 いのか・・・。彼は自分の事を好きだと率直に言ってくれた。それなのにわたし は笹原さんが「それ」を見たら・・・と・・・試すようなまねを・・・。そして わたしは一言も・・・この期に及んで自分の気持ちを口にしていない!なんてい やらしい人間だろう。わたしはわたしの心が分からなくなった・・・。わたしは 本当に笹原さんの事が好きなんだろうか?夏コミでわたしに見せてくれたわたし を見守るあの笑顔が素敵だったから? チャイムが鳴る。 (とうとう来た・・・) はっとして荻上は玄関に向かった。 3. 《くちなし》(山梔子、梔子、Cape Jasmine) 洗練、清潔、沈黙、とてもうれ しい 笹「やっやあ・・・」 荻「どっどうぞ・・・」 笹「うっうん・・・お邪魔します・・・」 部屋に通された笹原は緊張した面持ちでそわそわとテーブルに座った。 笹「いつ来ても片付いてるよね・・・俺の部屋とは大違い!」 静寂の間を持たせようと、笹原はうわずった声でしゃべった。 荻「いえ・・・来客があるときだけですよ・・・普段は散らかしてて・・・」 笹「そっそう?」 荻「あっあの・・・今日はわざわざすみません・・・どうぞ、ジュースでいいで すか?何も無くてすみません・・・」 笹「いや!お構いなく!」 二人だけの気まずさをお互い意識しながら、沈黙の途切れが来るのを恐れて二人 は何げ無い会話を続けた。 荻「あっあの・・・それで・・・例の・・・」 荻上は顔を赤らめ、うつむきながら、スケッチブックを差し出した。 笹「あっ、それが例の・・・じゃあ・・・でもちょっと緊張するなー、はは」 笹原は荻上から『例の』スケッチを受け取り、めくり始めた。 しばらく二人に沈黙が続いた。 荻上はテーブルの隣で正座して、うつむきながら、ちらちらと笹原の表情を見て いる。 笹原は荻上のそうした視線を傍から感じながらも、表情を変えないでスケッチを 見ていた。ただ時々感嘆の声をあげた。 笹「へえー、俺の特徴とらえてるね。あっ斑目さんそっくり!」 笹「ほほー、なるほどねー」 気まずい間を紛らわすために、独り言のように言葉を発しながら、笹原はスケッ チを眺め続けた。 そして描写が過激な部分に差し掛かると、荻上は耐え切れず目をつぶってうつむ き、震えていた。 笹原はその震える表情を見て思った。 (本当に恥ずかしくてつらいんだろうな。自分の裸をさらけ出しているようなも んだもんな・・・) 笹「うん、見終わったよ」 と言い、笹原はスケッチブックを荻上に返した。 心の準備はしていたので、思ったほどショックや動揺は無かった。しかし緊張か らか、ひたいに汗がにじんでいた。 (気付かれたか?) 4. 《とけいそう》(時計草、Passion Flower) 聖なる愛、キリストの受難 荻「どうでしたか?無理しないでいいです。ウソは嫌です」 笹「・・・まあ・・・予想していた通りの感想かな・・・」 荻「というと・・・」 笹「まあ・・・似てるけど漫画にディフォルメされてるし・・・気持悪いという ほどでは無いね。俺ってこんなに凛々しく見えるんだ!はは!まあ、過激な描写 は巷に溢れているし、抵抗力や免疫もあるしね。ただ・・・面白いとか、興奮す るとかはしないし、よく分からないというのが正直な感想。でも事情を知らない 人が見れば確かに嫌かもね。」 荻「・・・でしょうね・・・。正直な感想、ありがとうございました。」 笹「・・・ねえ、こういう反応は分かりきってる事じゃないの?」 荻「え?」 笹「ずっとわだかまっていた事なんだけど・・・、あの・・・こういう知識の無 い中学の友達に見せた時の状況が、予備知識のある俺に見せて同じ反応になるな んて・・・ありえないよね。もちろん、中学以来、そういうのを俺以外に人に見 せた事無いと思うし・・・」 荻「そんな事はありません!もちろんアレ以来男の人はおろか、大学に入るまで 他人に見せた事はありませんよ!でも現に笹原さんだって、不快に感じたはずで す!表情見れば分かります!男の人には無理なんです!ましてや本人が描かれて いるなんて・・・。だから・・・彼は・・・」 荻上の表情が苦悩にゆがみ、自嘲する表情を見せた。 その表情に笹原は少しひるんだ。だがここで逃げてはいけない。そんな気がした。 笹「その過去はもう変えようが無いじゃない!そうやって過去を気にして生き続 けてもしょうがないよ!そんなに昔した事が悔やまれるんだったら、俺が一緒に 当事者に謝りに行ってもいいよ!荻上さんがそれで気がすむなら・・・。」 荻「・・・会ってくれるわけありませんし、会わせる顔もありません・・・いま だに懲りずに続けてるんですよ・・・やめられないんですよ・・・」 笹「だったらなおさら今が大事じゅない!俺は別に見ても平気だし・・・。そり ゃあ理解はできないけど・・・それを言ったら俺ら男の二次元萌えだって興味無 い人には理解できないものだと思うし・・・だから・・・」 荻上は泣いてかぶりを振って答えた。 荻「ちがうんです!そんなことじゃないんです!」 笹「違うって・・・?」 荻「わたしが本当に恐れているのは・・・わたしの妄想が・・・わたしの醜い妄 想を見て・・・わたしの心をおぞましいと思われる事が怖いんです!」 笹「そんな事・・・思ってなんか・・・」 荻「・・・そして・・・そして・・・何よりも!自分が悪いのに!本当は巻田君 を憎んでました!わたしを許さず消えた彼を!そしてわたしを裏切った友人も! そしてそれを許せない浅ましい身勝手な自分を誰よりも蔑み、憎んでました!わ たしはこういう人間なんです!」 5.《のいばら》(野茨 Rosa multiflora ) 花- 素朴なかわいらしさ 実- 無意識の美 荻上は顔を手で覆って、泣き崩れた。とてもでは無いが、笹原の顔を見ることはできなかった。 そして思った。自分自身認めようとしなかった心の真実に自分はたどり着いた。 こんな自分に愛される資格があるだろうか・・・。 荻「・・・だからこんな自分を消してしまおうと・・・飛び降りて・・・」 (言った・・・。もうだめだ。自分でまた台無しにした・・・。終わらせてしまった・・・。) そう思ったから、荻上は笹原の次の行動にとても驚いた。笹原は黙って荻上に静 かに寄り添い、荻上をそっと優しく抱しめ、離さなかった。 荻「えっ!?」 笹「もういいよ・・・何も言わなくていいから・・・一人でそんなに苦しまなく ていいから・・・だから・・・しばらくこうしていたい・・・」 荻上は笹原の腕のすきまから、笹原の顔を覗きこむと、泣いているのに気付いて、 驚いた。そしてうつむき、静かにそのままでいた・・・。 時間の感覚は無かった。まるでこの部屋の空間だけ別世界のような感覚だ。 静かな静寂が二人を包む。 (本当に小さいんだな・・・) 笹原は荻上を抱きすくめ、そのぬくもりを感じながら、そう思った。結局のところ、笹原自身にとって荻上がどんな存在であるか、笹原は理解した。 触れれば刺々(とげとげ)しく、こっちが傷つきかねない。でもその茨の奥に咲く花と実に大分以前から気付いていたのだ。今それを知った。 その花と実こそ自分がずっと求めていたものだった。自分も柔和な笑顔と愛想 の表情の奥に、心の澱(おり)をずっと溜めていた。時として自分を偽る事へ の後ろめたさ。この真っ直ぐで素朴な心情がどれほど自分の心を動かすか・・・。 ずっと前から気付いていたのだ・・・。 (彼女は俺の表であり裏だ。そして俺も彼女の裏であり表なんだ・・・) (大きくて、温かい・・・) 落ち着きを取り戻し、安堵の表情で静かに笹原にもたれかかりながら、荻上は 思った。後悔、怒り、憎しみ、恐怖、これらから解放されたわけではない。自 分の醜い心の面と向き合う事はこれからもあるだろう。 でもそれは誰でもあることで、少なくとも自分は一人でそれに向き合う事は無 い事を知った。そして笹原が自分にとってどういう存在であるかが重要であっ て、自分の妄想が笹原にとってどのようなものであるかが、重要な事ではない 事を知った。 6.《れんげそう》(蓮華草、Astragalu) あなたは幸福です、私の幸福、緩和す る、あなたが来てくださると私の苦しみがやわらぐ、感化 時は動き出した。 二人は急に「その」状況に気付いた。 笹「ごっごめん!なっなんか妄想はとめられないみたいで・・・」 荻「あっいえ・・・こちらこそ・・・何言ってんだろ・・・」 荻上は真っ赤になってあたふたと笹原から離れた。 笹「あっそうだ!お腹すいたね!外で散歩がてらに何か食べに行こうか!」 荻「そっそうですね!」 二人は外出した。そしてゆっくりと並んで歩いた・・・・。 荻「笹原さん・・・」 笹「ん?」 荻「故郷に蓮華草がきれいな草原があるんです。花盛りにいくとまるで薄青い雲 の上を歩くみたいなんです。いつか・・・一緒に見に行きませんか?」 笹「そうだね・・・。見てみたいね」 9月中旬の気候はまるで小春日和を思わせるような暖かさで、清々しい晴天はその 蒼さを深めていた。二人は穏やかな表情をしながら、黙って歩きつづけた。
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/75.html
笹原 11 00 【投稿日 2005/12/19】 げんしけん24 笹原が学食に向かうと、まだ昼には早いので、学食の中は閑散としていた。 だから荻上の姿を見つけるのにそう時間はかからなかった。 笹「荻上さん!ずいぶん早いね!どうしたの?」 荻「あら、笹原さんこそどうしたんです?わたしは午前の予定の講義が休講 になったんで、遅めの朝食と早めの昼食を取りにきたんです。」 笹「俺も同じだよ。俺の場合は就職活動だけどね」 荻「大変ですね」 そう言いながら二人は同じテーブルで食事を取り始めた。 荻「いつもあの教授は勝手なんです!」 荻上は憤慨していた。 笹「まあ、俺の時からそういう人だったからねえ・・・」 あいかわらず、怒りや軽蔑、敵意を隠そうとしない。それで漫研でトラブル になったのに・・・難しい子だよな・・・と笹原は思っていた。 笹「午後からは部室に顔出すの?俺もヤボ用片付けてから、顔出すつもりだ けど・・・」 荻「ええ、そうですね、あいかわらず、大野先輩はコスプレの事しか頭にあ りませんけどね!そう、わたし・・・」 と言いかけて荻上は口をつぐんだ。 笹「どうしたの?何か相談したいことでも?大野さんの件は俺からも少し釘 をさしとくけど・・・」 荻「いえ、別に・・・」 時々、この子は不可解な行動や言動を取るな・・・。無意識の行動にも見え る。でも礼儀正しく素直なところも見せる。惠子もこんなだったら、妹萌え もできたかな?と笹原は内心で苦笑していた。 突然、荻上はそわそわし始めた。見ると向こうのテーブルに例の漫研女子が 数人固まって、こっちを見てクスクス笑っている。 荻「わたしこれで失礼します!」 笹「じゃあ、また後で・・・」 荻上は立ち去った。 (荻上さんは何を過剰に意識しているのだろう。不可解だ。サークルの先輩 と後輩が飯を一緒に食っても別に変じゃあるまい。漫研女子の下世話なかん ぐりでも気にしているのだろうか・・・。女子のそういう噂話などよくある ことではないか・・・。でも漫研の女子に一般教養で一緒になった子もいる。 無視はできない。声をかけるか・・・) 笹「やあ、久しぶり」 漫「ひさしぶり!仲いいわね!変わってるでしょ、あの子」 笹原は内心むっとした。そんなことは分かっている。だが彼女を何も知らな い他人からそんな事を言われると何故か腹が立った。 笹「おかげさまでうちじゃ仲良くやってるよ!」 とにっこりして答えた。表情と裏腹の強い皮肉の言葉に漫研女子も黙りこく った。 さて・・・見栄でヤボ用とは言ったものの時間がぽっかり空いてしまった。どうしたものか・・・と笹原は思いながら学食を後にした。
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/220.html
Zせんこくげんしけん2 【投稿日 2006/03/13】 せんこくげんしけん 【2005年8月9日/12 50】 話は遡るが……。 大野はこの日、スージーとアンジェラを再び大学内に連れてきていた。 咲から、「キケン、大学にクルナ」と短いメールが入り、続いて簡潔に状況が知らされた時、すでに大野達は大学に来ていた。 「もう遅いんですけど……」 引き帰そうにも、正門には、野球のユニフォームを着て緑色のマスクをかぶった怪しい人物がこちらを見ている。 マスク男が近付いて来た。 旧現視研メンバーと思われる不審者を捕まえようというのだが、マスク男自身が不審者そのものである。 逃げることもできず、「あうあうあ……」と、うろたえるばかりの大野。 アンジェラは隣で、「What is it festival today? I want also to wear that Mask.」と誤解して笑っている。 マスク男が声を掛けようとしたとき、その後方から、「あー、いたいた! 何をしてたんですか“ヨーコ”さん!」と声がした。 スーツを着込んだ元漫研のOB、高柳が息を切らして駆け込み、大野達とマスク男の間に割って入った。 高柳は強い口調で、「彼女達は文学科のブラッシー教授のお客さまと、その通訳のカンナヅキさんだけど、何か用かね?」と切り出し、さっさと大野、アンジェラ、スーを連れて行った。 ある程度歩いて立ち止まった一行。高柳は、斑目同様に近藤の電話を受けて異変を知り、大学に様子を見に来ていたのだ。 大野は両手で高柳の手を取り大げさすぎるくらいに礼を述べた。 思わず赤くなる高柳は、「大野さんのためだからねー。ひとまず漫研へ行こう。あそこはまだ中立だから」と案内をかって出た。 ホッと胸を撫で下ろす大野だったが、直後に恐ろしいことに気が付いた。スーの姿が見当たらないのだ。 傍らのアンジェラは、「It is safe. She comes back sooner or later. 」と大して気にしていない。 「そのうち帰ってくるって言ったって……ノンキ過ぎよ」と嘆く大野であった。 【8月9日/13 15】 斑目は午後の急用をでっち上げて電話先の上司に必死に頭を下げ、恵子とともに行動を開始。咲や笹原と合流するために大学内の稲荷のほこらに向かう。 林の長い小道を歩く途中、ふと斑目が足を止める。ザワザワとした妙な違和感を感じるのだ。 一緒に立ち止まり、「どした?」と尋ねる恵子に、「悪ぃ、先に行っててよ。そのまま行けば春日部さん達がいるはずだから……」と応える。 キョトンとした恵子は、あー…と納得した素振りを見せ、「立っション?」とデリカシーのない一言をぶつけた。 斑目は、(これだから現実の女は……)と呆れ、追い払う手ぶりをしながら、「そういうコトにしといてよ」とだけ答えた。 恵子が道の向こうへと消え、斑目が周りを見回した直後、不意に、「どうしたの?」と声がした。 「うおっ!」驚く斑目の背後には、いつの間にか初代会長が立っている。 (この人は何者なんだ?)と思いつつ斑目が、「初代、いま大変なことに……」と切り出そうとすると、初代会長は、「うん知ってるよ。“だから僕も来たんだ”。で、どうしたの急に立ち止まって」と最初の質問を投げかけた。 「いやちょっと……変な感覚がしたものですから……」と斑目が答えると、初代は意外な言葉を返した。 「“もう一人の自分”に出会った時のような感覚かい?」 斑目の表情は一気に強張り、「なんで初代が“それ”を知っているんですか」と低い声で尋ねた。 (解説せねばなるまい。斑目の言う“それ”とは、「3年前にもう一人の自分と出会った」ことであり、この斑目は、前作での「斑目2002Ver」のその後の姿なのだ) あの日以来、(あれは悪い夢、幻だったんだ)と思っていた。否、思うよう心掛けていた斑目だったが、「あのとき、見ちゃってねぇ」とアッサリ答える初代会長の言葉にがく然とした。 さらに初代は、「何故かは知らないけど、あの場に荻上さんがいたでしょ」と語る。 斑目は、3年前の自分が「斑目05」を問い詰めていたとき、近くで失神した女の子がいたことを思い出した。 「あれが荻上さん?」 初代会長は、混乱する斑目に、「僕の“仮説”だけどね…」と語り始めた。 初代が言うには、原口が持っていた荻上のノートと同人誌は、2005年から2002年に迷いこんだ荻上の物だという。 斑目2人が口論し、荻上が失神したときに、雑誌などと共にバッグから落ちたものであり、当時の斑目05が荻上を介抱する際に、拾い忘れていたもの。 3年分の情報や801に関する着想が記されたノートや雑誌、同人誌を拾った原口は、情報を精査してその後の801の流行を先取りした……。 「最初の1年は様子を見て、資料と現実の流行の相違を確かめた。後年は自分の知り合いの作家を動かして実際の流行を一歩先んじればいい。HiってHaraguchiの頭と末尾だね。ヒネリがないね、ふふ」 (この人、ハラグーロが現視研を訪れた時にその場にいなかったはずだよな?)と、思いつつも耳を傾ける斑目。仮説とはいえ、コトの発端が自分にあることに呆れた。 初代は、「しかしノートに書かれた3年分の蓄積が無くなろうとしている今、次の手を打ってきた。それが荻上さんの同人誌だよ。タイムスリップした荻上さんは、たぶん1、2か月先の人なんだろうね。だから完成された本がある」と続けた。 斑目「ハラグーロは、荻上さんが今年の夏に同人誌を仕上げるのを待っていたというんですか?」 初代「カネとヒトを動かし、待つ時は待つ。彼はそうした才能に長けているね。彼の居場所はオタクという消費者側ではなく、消費のシステムを作る側だよ」 初代は、「ここでボクから忠告」と人さし指を立てた。 「現視研は新体制で存続するらしいし、これも歴史の一つとして認めるか、抵抗するかは君らに任せるよ。ただし……」 斑目「ただし、何ですか?」 初代「時間は自然と同じで、厳然とした仕組みがあるとは思わないかい?」 斑目「はあ?」 初代「未来の情報が過去に流れてしまい、時間のパラドックスを大きく揺さぶった。ありえない事が起きれば、それを修正する働きも出てくると……」 斑目は、「ははは…“ネコドラくん”のタイムパトロールみたいなもんスか」と愛想笑いをした。 初代「そんな組織的ものじゃなく、ね」 斑目が質問しようとした時には、もう初代の姿は消えていた。 初代の言う、時間の“修正する働き”が何かは分からなかった。だが、(コレが本当なら、自分にはどうしようもない)という諦めの気持ちが心を支配しはじめていた。 【8月9日/13 30】 「悪い、遅くなった」 斑目が稲荷のほこらの前に到着した。恵子が、「ひょっとして“大きい方”?」とまたもヒドイ一言。 咲の携帯に大野から、漫研に退避していることが伝えられ、集まれるだけの人数で対策を協議することになった。 「じゃあ先輩、アレお願いしますヨ」と朽木に促された斑目は、「え? あーアレね。では、第1回部室と荻上さんを取り戻すにはどうすればいいのか会議~」と、張りの無い声で号令を掛けた。 咲「この問題はうちらには大きすぎだよ。大学事務に訴え出ようか?」 笹「簡単に話が進むとも思えないよ。不利な情報を流されていたら…」 朽「いっそ真正面から玉砕を図るでアリマス!」 咲「1人で玉砕してろ。それにアタシらで喧嘩して勝てるわけないじゃん」 恵「でもあのデヴは一度シメないと気が済まないよ」 斑目は議論に加わろうとしない。それどころか、「……このままでも、いいんじゃないかなぁ」とポツリと本音が出た。 「嘘ーーーっ!?」周りが驚きの声をハモらせる。 斑目は(時の趨勢には逆らえない)と、及び腰になっているのだ。 「“決まったこと”には逆らえないんじゃないかな……荻上さんにとっても後々はメジャーになれて……」 「フザケないで下さいよ!」声を荒げる笹原。彼は荻上の涙を見ている。咲も同調し、「アンタそこまでヘタレとは思わなかったよ……」と嘆く。 斑目はチラリと咲を見た。 3年前に出会った「未来の自分」は咲に惚れていた。自分はそれに反発していたハズなのに、今、まんまと同じ轍を踏んでいる……。だからこそ「逆らえない」と感じてしまうのだ。 笹原は、苛立ちを隠せない。 「斑目さんはOBだから、直接は関係ないでしょう。でも僕らは現役ですし、荻上さんは大切な……仲間です。斑目さんの力は借りません。もう行きます」 朽木と咲も笹原に続いた。去り際、咲は寂しげな目を斑目に向けた。 去っていく後輩達、「春日部さん、高坂君と連絡取れる?」「どうかなぁ……」との声が次第に遠くなる。 斑目はしばらくうつむいていたが、ふと顔を上げると、恵子が残っていた。 「部室は居心地がいいって言ってたじゃん。取り返そうと思わないのかよ」 斑目は答えない。 「根性なし……」それだけ言うと、恵子は3人の方へと駆け出していった。 【8月9日/14 10】 現視研部室で、沢崎と荻上が向かい合って座っている。 沢崎「ところで荻上さん。“彼女”は知り合い?」 荻上「いいえ。知りません…」 2人の視線の先、入り口に近いロッカーの前に、スージーが座っていた。いきなり部室にやってきた彼女は、荻上たちを一瞥しただけで、後は一時間近く黙々と同人誌を読みふけっている。 荻上は、スージーとは前日に出会ったばかりだが、知らぬフリを決め込むことにしていた。 一方の沢崎は焦っていた。見張りの網をスルスルとくぐり抜けて、言葉の通じない外国人が部室に入り浸っているのだ。 ちょうど原口が留守にしていたので良かったが、彼が印刷関係の打ち合わせから帰ってきたら、自分が責任を取らされるのではないかと思っている。 「誰かいないですか?」沢崎は、廊下にいるはずのマスクマンを呼んだ。赤いマスクをかぶり、赤いポンチョを身にまとった背の高い男がやってきた。 沢崎「……何のサークルの方?(汗」 男「メキシコ文化研究会です」しゃがれた声が返ってくる。 沢崎「すまないけれど、この女の子を連れて行ってください」 スージーは、赤マスクの男を見上げて、「?」と首をかしげた。男はカタコトの英語で語り掛ける。 「さすがメキシコ文化研究会だ」と感心する沢崎に、荻上は(公用語違うだろ)と心中で突っ込んだ。 スージーと男の姿を眺める沢崎の横顔には、原口のような意地の悪さがないと感じた荻上は、「あなたは、何でこういう事をするんですか?」と尋ねた。 沢崎はためらいの表情を見せたが、「僕は現視研に入ったことがあるんだ。でも、春日部咲にひどい仕打ちを受けて、すぐにやめちまった」と答えた。 「春日部先輩、そんなことする人じゃないし……」との荻上の反論に、沢崎は、「事実追い出されたんだよ僕は」と、垂れた目をつり上げて反論した。 「さっきのコギャルが、ここが居場所だとか言ってたけど、僕はその居場所を追われた。こうして新しい会長になって、それを取り戻せたんだよ」 赤マスクの男は2人の会話に耳を傾けていたが、「英文科の学生のところに連行してきます」と、スージーの手を引いて部室から出て行った。 荻上と沢崎、そしてスージーの姿を、外から監視する視線があった。向い側の窓。サークル棟4階の児童文化研究会の部室からである。 【8月9日/14 30】 笹原、咲、朽木、恵子は、無事にサークル棟に侵入。児文研部室に匿ってもらっていた。2階の漫研よりも現視研の様子が掌握できるだけでなく、児文研自体が目立たないサークルだからだ。 「お茶入りましたよ」「あ、どうもすみません」「いいええ」 マターリとした室内で、朽木が絵本や児童文学の山に隠れるようにかがみ、双眼鏡を構えている。 その後ろでお茶をすすりながら、咲が笹原に問いかけた。「何かおかしくなかった? 私たち、あまりにも楽勝でこの部屋に来られたけど」 笹原も腕組みをしながら、「盗聴のおかげもあるけど、まるでルートを開けてもらったような……」と考え込むが、「罠だとしても、荻上さんは絶対に助けなきゃ」と、自分に言い聞かせるように力強く語った。 その姿を見て咲も表情を引き締める。 「じゃ、打ち合わせ通りに。手荒くて古典的だけど、やるっきゃないね」と言い、絵本に手を伸ばしている恵子に、「アンタも頼むよ」と声を掛けた。 恵子が緩い返事をかえす。朽木は双眼鏡を覗きながらブツブツと、「状況開始ヒトゴウサンマル時、ヒトゴウサンマル時……」と復唱した。 笹原はちょっと気掛かりな様子で、「春日部さんは、いいの?」と尋ねた。作戦内容に、ある不安がよぎっているのだ。 「大丈夫、私も腹くくったから!」 咲は心配そうな視線を振り払うように笑顔を見せた。 【8月9日/14 35】 漫研。高柳と部員らが外の様子を見に行き、大野とアンジェラが残された。スーが捕われたことは、児文研から連絡を受けている。 アンジェラは、『ホラネ、彼女の居場所はすぐに分かるでしょ』と笑う。「敵の手中にあるんですが……」との大野の呟きは気にも留めない。 高柳の前では、笑顔と感謝を忘れない大野だが、内心は、(会長である私を差し置いて新現視研だなんて。原口許さん!)と憎悪がトグロを巻いていた。 「私も何か役に立ちたいけど……」 ふと、アイデアが浮かび、田中の携帯に電話を入れた。すると慌ただしい声で彼が電話に出た。 「斑目から電話があって状況は聞いてるよ。今からそっちに向かうところ!」 大野は(斑目さんも動いてくれたんだ)と心強い思いがした。そして、携帯を握る手にグッと力を入れた。 「田中さん、お願いがあります!」 【8月9日/14 50】 斑目は、1時間以上、稲荷のほこらの側に座り込んでいた。(仕方ないだろ、こちとらただのオタクだ。何ができるっていうんだ……) しかし、胸の中は後悔でいっぱいになっていた。咲の寂しげな視線が辛かった。恵子は最後に、涙ぐんでいたようにも見えた。 そうこう考えているうち、何やらまた妙な違和感を感じはじめた。 その時、「斑目晴信ッ!」との叫び声が林の木々を振るわせるように響き、斑目はビビって立ち上った。周囲を見回すと、50mほど先、小道の向こうに声の主と思われる人影が見えた。 身体全体が赤い、赤のマスクに赤いフード、いやポンチョを着込んだ男が拡声器を持って立っていた。メキシコ文化研究会の男だ。変な生き物を見るように男を凝視する斑目。 「俺を捕まえにきたのか!?」との問い掛けを無視した赤い男は、「この女、預けるぞ」と、後ろに隠れるように立っていたスージーを斑目の方へと歩かせた。 男は、「拡声器を使ったから、他の追っ手が来る前に動かないと、今度は本当に捕まるぞ」と言い残して姿を消した。 スージーが斑目の前にトボトボと歩み寄って来た。デフォルトで突き刺すような視線を向けてくる。「預けるったって、言葉わかんねーよ」と頭が真っ白になるヘタレ。 スージーは無表情のまま、「Circumstances are heard from him. (彼から事情は聞いた)」と声を掛け、手書きのメモを手渡した。 メモの先頭には、「8月9日行動レジュメ」と書かれていた。 【8月9日/15 10】 現視研部室では、原口が荻上をねちっこく説得していた。 「このままミナミ印刷から原稿をいただいてもいいんだよ。最悪、同意がなくてもね」 押し黙っている荻上。原口は言葉を続けた。 「ほら、笹原君だっけ? ボクが友達の編集者に掛け合って就職を便宜してやってもいいんだよ」 「!」荻上がハッとした表情で原口を見たが、すぐに、「そんなことをして喜ぶ人じゃありません!」と目をそらした。 見守る沢崎のトランシーバーから、ノイズまじりの音声が流れてきた。 『現視研らしき人物を講堂前で発見の情報あり、柔術サークル、野鳥観察同好会は現場確認に急行せニョ!』 「二ョ!?」原口、沢崎、荻上の3人は思わずハモった。 【8月9日/15 25】 咲は、サークル棟内でも人の気配が無い、1階角の空き部屋の前に来ていた。 屋内を見回っていた柔術サークル、野鳥観察同好会は、朽木の虚偽情報でおびき出してあり、この場所までくるのは容易だった。 カチンッ、カチンッ、カチンッ……。咲は物憂げな顔で、久々に手にしたジッポーのフタを開け閉めしている。 「あの日」以来、ジッポーは自分を戒めるためにカバンの中に入れてあった。それを、こんな形で使うとは……。 カチンッ、カチンッ、カチンッ……。無意識の動作は続く。携帯が鳴った。電話の向こうから「ねーさん、準備できたよ」と、恵子の声。彼女は咲とは別の場所で、同じ行動を取っていた。 サークル棟内で小規模のボヤ騒ぎを起こそうというのだ。周りに延焼するものがないことを確かめ、壁にはバケツで水を掛け、児文研からいただいた古い雑誌や、廊下に放置されているゴミをかき集めて置いた。 カチンッ、カチンッ、カチンッ……。電話をしながら、視線は燃やす対象物をうつろに見据えている。 咲は、「お前、本当に建物を燃やすなよ。煙が出て報知器が作動すればオッケーなんだからな」と軽口を叩いた。 「ダイジョーブよ!」と返事する恵子に、携帯を持つ咲の手の震えは見えるはずもない。 15 30。時間だ。 咲は意を決してジッポーに火をつけた。種火になる新聞紙に火を移し、雑誌の山の横へと投げた。徐々に火が燃え移る。 (あの時と同じだ)ゴミ置き場を燃やした時と同じように火は古い雑誌を瞬く間に焼きはじめた。自分は近場の漫研へ逃げなければならない。 しかし、足が固まったように動かない。咲の瞳に火の赤が映え、そこから目をそらすことができない。ガクガクと足が震えはじめた。 火が炎に代わっていき、熱が足下や頬に伝わってくる。十分に周囲との間隔を空けているから延焼こそ起こさないが、煙が廊下を満たしはじめた。 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリッ! 火災報知器のベルと同時に咲は、恐怖にかられて「コーサカッ!」と叫んだ。その瞬間、後ろから腕を取られ、引っ張られた。 「こーさか?……」 振り向くと、そこには真っ赤なマスクの男が。あっけに取られる咲。 「質問無用。早く漫研へ行って!」男は咲の手を引いて階段まで連れて行き、また煙の中へと姿を消した。 【8月9日/15 30】 火事の記憶が恐ろしいのは、咲だけではなかった。 「ひっ!」火災報知器のベルが鳴り出した瞬間、サークル自治会室では木村が極端に反応してうろたえだした。 前回のボヤ騒ぎの時に迅速的確な指示をくれた北川百合枝は、すでに卒業している。自分の任期にあのような事件がないように祈っていた木村の願いは破れた。 タイミングの悪いことに、夏期休講中で、ちょうど自治会室には自分しかいない。 手もとの無線からは、事実確認を求める連絡が相次いでいる。1階に煙が充満しているとか。火元は1階だとか、3階だとか。炎が強くて初期消火ができないとか。デマを含むパニクッた怒声が次々に流れてきた。 木村は震える手で放送を流しはじめた。 『か、か 火災が発生! か 館内の人は迅速に建物の外へ避難するように! これは訓練じゃない!』 「木村ではボヤ騒ぎに対処できない」という、咲や笹原の読みは当たった。おまけに朽木が無線にデマ情報を流して煽っていたのだ。 けたたましく鳴り続けるベルと、うっすらと流れてくる煙の中、笹原は4階から3階に降りてきた。 「煙が……火が強くないか」と心配しながら、廊下の向こうの現視研部室に目を凝らした。ちょうど、赤いマスクの男が部室のドアが開けて中に入ったのを見た。笹原は物陰に身を隠す。 ボヤ騒ぎに乗じて見張りを遠ざけ、荻上を奪還するという予定だったが、マスク男が一人同行していることに笹原は戸惑った。 赤い男の指示に従って原口が廊下の向こうへと走って避難していった。間を置いて、赤い男と沢崎が、荻上を連れ出して廊下に出てきた。 廊下の向こうを見守る笹原だが、ふと人の気配を感じて後ろを振り向くと、一緒にスージーが隠れているではないか。 「うわ! いつの間に?」と慌てる笹原にスージーは、廊下の方を指差した。笹原がその指の先に視線を戻すと、赤いマスク男がこちらを向いて、手招きをしている。 「味方?」 その時スージーが笹原の背中を押して、「スリヌケザマニカッサラエ!」と声を掛けた。 「あ、っは、ハイ!」笹原は弾かれるように、廊下の向こうの荻上に向かって走り出した。 赤い男は、後ろから走り寄って来た笹原に荻上を受け渡すように道をあけ、荻上の背中を押して「走れ!」と叫んだ。 瞬間、後ろから笹原の手が、荻上の手を取った。荻上は一瞬戸惑ったが、握った手が笹原のものだと気付くと、一緒に、懸命に走り出した。 廊下には、呆気にとられた沢崎だけが残された。気が付くと赤い男もいない。 「あ……え? えーーーーっ!?」 笹原と荻上は息を切らしながら走る。3階から2階へと駆け降りた時、2階トイレ前に斑目が立って、大きく手招きをした。 笹「斑目さん!何でここに!」 斑「説明は後! このまま普通に漫研へ逃げ込んでも、すぐに見つかるぞ。俺が時間を稼ぐから!」 その横で荻上は、スージーに女子トイレの中へと引っ張りこまれていた。直後に中から、「何するの!」「きゃあっ」「嫌ぁんっ」「あぁんっ!」と、荻上の悲鳴が聞こえてくる。 笹原と斑目は、顔を見合わせて頬を赤くした。 火の付いた雑誌類が見つかって消火された後、緑色のマスクをかぶった男達がサークル棟内に次々と入り、逃げた荻上を探しはじめた。 一方、サークル自治会室では、木村が電話で大学事務局に報告を行い、報知器の誤作動とデマによる混乱だと必死で弁明をしていた。 まだ煙が立ち込めている1階の非常口から、スモークを振払うように男女が飛び出して来た。一人は斑目だ。 4階児文研で待機する朽木のトランシーバーにも、“荻上千佳発見!現視研の男性と思われる人物と正門へと逃走…”と通信が入ってきた。 【8月9日/15 45】 斑目は追っ手から逃れて、学内の林の道へ逃げ込んだ。その先は昼に訪れた稲荷がある。 2人は、ほこらの前に座り込む。斑目は、「上手いことまいたかな」と声をかけたが、荻上は笹原の持っていた帽子を目深にかぶり、息を切らして言葉が出ない。 直後、ザワザワザワ……ッと、木の葉の舞う音がしたかと思うと、2人を囲む四方から、黒尽くめの衣装に緑のマスクをかぶった男達が駆け寄ってきた。 「椎応甲賀流忍術同好会推参!」「何でそんなもんまであるんだよ!」思わず速攻で突っ込む斑目。 「これも活動費用助成の為、許せ」と同行を促された“荻上”がスッと立ち上がり帽子を脱ぐと、ブワッと金髪が風にたなびき、その奥から目つきの悪い碧眼が現れた。スーだ。 背格好が荻上に似ていることから衣類を交換。斑目と一緒に囮になったのだ。 「うわっ騙された!」がく然とする忍に、スージーはカタコトの日本語を発した。 「キミノオトウサマガイケナイノダヨ!」 「図ったな現視研ーッ!」 ネタは理解できるがついていけない斑目は、「肌の色で気付けよ」と、脱力するばかりであった。
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/369.html
17人いる! 【投稿日 2006/08/14】 ・・・いる!シリーズ 注:データ量の関係でニ分割しています 前作「11人いる!」のオリジナル設定等のまとめ ①今年の新1年生は、男子5人女子6人の計11人です (しかも9月にはスー&アンジェラも合流する予定) ②諸々の事情で卒業生たちは以前より顔を出すようになり、それもあって部室が手狭になったので、サークル棟の屋上にプレハブ製の部室を新設しました ③斑目は相変わらず部室に昼飯食いに来てますが、4月以降は外回りの仕事も手伝っている(その為に普通免許取りました)ので、昼休み以外の時間帯にも時々部室に来ます ④作業着姿でガリガリでメガネで甲高い声でテンションの高い喋り方なので、斑目は1年生女子からシゲさんと呼ばれています ⑤クッチーは去年の秋頃から空手を習っています ⑥諸々の事情で、クッチーは児童文学研究会にも掛け持ちで入会してます 児文研会長(いろいろあって、クッチーは「お師匠様」と崇拝してます)の勧めにより、普段は大人しくなりましたが、イベントになると必要以上に大騒ぎします ⑦荻上会長は巷談社主催の春夏秋冬賞という漫画コンクールに応募して審査員特別賞を獲得し、それがきっかけで今年の秋に「月刊デイアフター」で新連載開始の予定です (ちなみに当初新部室を建てる資金には、この賞の賞金を充てる積りでしたが、いろいろあって初代会長が出してくれました) 神田美智子 キャラクターモデル 「かってに改蔵」の神崎美智子 元隠れオタ。 高校時代は周囲にはオタ趣味を隠し、オタであることがバレそうになると走って逃げていた、 言わば初期型笹原と初期型荻上さんの合体キャラ。 両親と兄1人の4人家族だが、家族全員がオタ (しかも全員同人誌を作る側のオタで、1人1台ずつコピー機を所有している)なので、 幼少の頃よりコミフェスに参加していた。 中学時代からは売る方でも参加している。 ノーマルなカップリング中心だが、最近ヤオイも始める。 入学当初は普通の大学生活をする積もりだったが、 オタスメルに引き寄せられてついフラフラと現視研の部室に乱入してしまい (たまたま鍵を閉め忘れたまま、全員席を外していた)本能的にエロ同人誌を発見。 ついつい読み耽っているところ、トイレから戻った荻上会長とファーストコンタクト。 「違います!私オタクじゃありません!コーディネイターが遺伝子操作された新人類だなんて、全く知りません!」 訊かれもしてないのにオタ知識を披露するセルフ語るに落ちる状態&赤面で逃走するセルフドッキリ状態となる。 そのことがきっかけとなって、荻上会長に説得されて入会する。 国松千里 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の国枝千里 元々は特撮オタで、それも50年代から70年代にかけての、東宝・円谷プロのミニチュア・着ぐるみ・光学合成主体の非CG特撮命の遅れてきた世代。 (でも今の特撮も、文句言いつつもちゃんと見ている) 将来は脚本家志望だが、その前に特撮撮影現場でスタッフとして働きたいと思っている。 高校からアニメにも興味を持ち始めてアニオタ道に入る。 だがいかんせん積み重ねが無いので、アニオタにとっての一般教養がところどころ足りない修行中の身。 垂れ目ながら大きな瞳のロリ顔美少女。 身長も150センチと小柄なので、見た目は中学生ぐらいに見える。 豪田蛇衣子 キャラクターモデル 「ドラえもん」の剛田ジャイ子 腐女子四天王(クッチーが命名した、新1年生の腐女子4人組の通称)のリーダー格。 小学生の頃から少女漫画を描いていて、投稿作品が何度か賞を取っている。 大柄で肥満体のゴッグのような体格。 だがその体格に似合わず、描く漫画は王子様や貴族が活躍する、少々古臭いが乙女チックな作風。 多少レズっ気があり、荻上会長を時と場所を選ばずハグする。 腐女子四天王は、某巨大掲示板の801板のオフ会で知り合って結成された。 (出身校は全員バラバラ) 彼女たちが高校3年の時、当時2年生の荻上会長は笹原の勧めで春夏秋冬賞に応募して審査員特別賞を獲得し、受賞作品は「月刊デイアフター」に掲載された。 中学の時の「あの一件」を元に描かれたその作品は、一部の腐女子の間で熱狂的に支持された。 四天王のメンバーもまた、その作品がきっかけで荻上会長を崇拝するようになり、彼女を追って椎応に入学した。 なおこの4人は、荻上会長を「荻様」と呼称する。 沢田彩 キャラクターモデル 「彼氏彼女の事情」の沢田亜弥 四天王の1人。 元々はジュニア小説を書いていた、ショートカットで色白の文芸少女。 ある時友だちにBL小説を見せられてヤオイに目覚め、ヤオイラノベ道に踏み入る。 元ネタを知る為に漫画も読み出し(それ以前はあまり漫画は読んでなかった)自分で絵も描きたくなってヤオイ漫画道に入る。 絵は初心者レベルだが、ストーリーの構成力や台詞回しに秀でる。 元々書いていた小説にはSF系のものが多く、そのせいかロボットアニメやファンタジー系アニメを題材に選ぶことが多い。 自室でしか吸わないが、実は1年生唯一の愛煙家。 台場晴海 キャラクターモデル 「さよなら絶望先生」の藤吉晴美 腐女子属性はむしろリーダーより濃い、四天王の参謀格。 男子が何か咥えていると、たちまちワープする。 イケメン君は彼女の前では、うっかりコーラも飲めない。 見た目秀才っぽい、スレンダーなメガネっ子。 巴マリア キャラクターモデル 「おおきく振りかぶって」の百枝まりあ 四天王の1人。 元ソフトボール部の体育会系腐女子。 部活の傍らヤオイを描いていた変り種。 高校球児フェチで、男臭く汗臭いスポーツ漫画や格闘漫画をネタにすることが多い。 蛇衣子ほどの上背は無いが、肩幅が広く大野さん並みの巨乳。 顔も目鼻立ちのはっきりしたなかなかの美人で、長い黒髪を三つ編みにしてることが多い。 やはり少しレズっ気があり、荻ハグ常習犯。 夏ミカンを握り潰せるほどの握力の持ち主。 日垣剛 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の曲垣剛 元野球少年でポジションは投手。 と言っても、毎年予選一回戦で帰ってくる弱小校で、彼自身もさほどの戦跡は残していない。 (まあそれでも、素人には打てない程度の剛速球と変化球は投げられるが) 肩を壊して休んでいた時にアニメや漫画の面白さに目覚め、オタ道に入る。 身長185センチの、クッチーの後継ぎ的肉体派オタ。 でも気は弱く、温厚で大人しい性格はむしろ初期笹原に近い。 実家は華道の家元で、本人も華道有段者。 有吉一郎 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の有島 高校時代は漫研。 腕より理論が先行するタイプ(もちろんそれなりに絵は描けるが)なので既存の漫研には馴染めないと考えて、初心者や非生産型のオタの集う現視研を選んだ、言わば絵心のある斑目的キャラ。 いかにも理屈先行型オタという感じの、細面のメガネ君。 人前でアジ演説風に喋るのが好きで、会長不在時のミーティングでは議長的役割をすることが多い。 伊藤とは同じ高校出身でよく一緒にいるので、それを腐女子四天王にネタにされている。 伊藤勝典 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の伊東 高校時代は文芸部。 脚本家志望で、もともとはアニメも実写ドラマも区別なく見る、一般人とオタクの境界線上のポジションに居たが、アニメの方が自由度が高いと考えて次第にアニメ中心にシフトしていく。 猫顔で、動作も猫に似ていて、喋る時も語尾に「ニャー」と付ける。 浅田寿克 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の浅野 高校時代は写真部。 神経質そうなメガネ君。 1年生会員たちの会話ではツッコミ役になりがち。 岸野と一緒にいることが多い為、有吉×伊藤同様、腐女子四天王にネタにされている。 岸野有洋 キャラクターモデル 「究極超人あーる」の岸田 浅田と同じ高校出身で、部活も写真部だった。 リーゼント風のひさしの目立つ髪型以外に取り立てて特徴が無く、あまり目立たない。 ↓ここから本編↓ 「なすてわたすはここに居る!」 荻上会長の雄叫びが轟く。 筆頭のまま被れるせいか、ソンブレロのような大きな麦藁帽子を被っている。 服装の方はと見れば、地味なワンピースの水着の上からパーカーを羽織っている。 「それ今日7回目ですよ」 すかさずにこやかにツッコミを入れる大野さん。 大野さんもまた同様の格好だ。 そして2人の眼前には、水平線が広がっていた。 夏休みに入ったばかりのある日、現視研の一行は海水浴にやって来た。 場所は3年前に訪れた、あの海水浴場であった。 参加者は新1年生11人、荻上会長、大野さん、クッチー、恵子、そして斑目と田中というメンバーだった。 この日は運悪く、担当している原稿の〆切日だったので、笹原は来れなかった。 春日部さんも店が開店したばかりで忙しいし、高坂と久我山は相変わらず忙しいので、今回は参加出来なかった。 ちなみに大野さんはある旅行代理店に就職が決まり、クッチーは未定であった。 大丈夫か、クッチー? 朽木「就職活動にも合間に息抜きが必要だにょー」 荻上「朽木先輩の場合、息抜きの合間に就職活動やってません?」 朽木「荻チンナイスツッコミだにょー」 荻上「皮肉が通じねえ…」 503 :「17人いる!」 その2 :2006/08/14(月) 01 47 30 ID ??? 今年の夏コミで、現視研は久々にサークル参加に当選した。 ちなみに今回荻上会長は、現視研の作品にはタッチしない積りだ。 秋から「月刊デイアフター」で新連載を開始して本格的に漫画家デビューするので、この時期は他の原稿にまで手を出す余裕は無い。 幸い今年の1年生には絵描きが6人も居るから、全面的に任せることにした。 描き手は有吉以外女子ばかりなので、当然のごとく内容は女性向けとなった。 だがそこからが問題だった。 腐女子にとって同人誌創作の1番のキモは、題材よりもむしろカップリングだ。 カップルの構成メンバーが同じでも、A×BとB×Aでは内容が全然違ってくる。 腐女子にとってヤオイのカップリングとは、己の全人格を賭けた大問題なのだ。 それゆえ1度こじれ出すと互いに一歩も引かず、泥沼の膠着状態となる。 現視研でもそれは例外では無かった。 7月に入ってからの部室は、毎日がケンケンガクガクの議論の連続だった。 恵子「お前らさあ、とりあえず海水浴でも行って頭冷やせよ」 いい加減ヤオイカップリング論争にウンザリした恵子がこう切り出し、議論が膠着して煮詰まっていた会員たちも一時休戦とばかりにそれに賛成した。 いつの間にか恵子は、某ラノベ原作のアニメのイベント好きのヒロインのように、現視研をイベントに導くポジションになっていた。 恵子「いいでしょ、姉さん?」 会長という立場を考慮してか、恵子はこの頃には荻上会長のことを「お姉ちゃん」ではなく「姉さん」と呼ぶようになっていた。 ここ数日間の部室内の、険悪な空気を憂慮していた荻上会長は、この案に乗ることにした。 荻上「いい気分転換になりそうだし、行きましょうか」 実は荻上会長は、後述する「ある理由」の為に海水浴には乗り気では無かったのだが、今の彼女はそんな個人的な理由で反対するほど子供では無かった。 (ちなみに冒頭の叫びは、斑目に「会長はこれ言うのがお約束だから」と唆されたから) 即座に日取りと場所が決まり、続いて「第2回海水浴に何持って行く会議」が開かれた。 前述のラノベヒロインの影響か、今年の1年生たちは意外とイベント好きで、様々な提案が出た。 「やっぱスイカ割りでしょう」 「うち、ビーチバレーの道具一式あるけど」 「お前確か、ゴムボート持ってたよな?」 「あそこの海水浴場って、バーベキューできましたっけ?」 「夏はやっぱり花火でしょう」等々。 結局その殆どが採用された。 (不採用になったのは、「それをやるような時間までは居ない」ということで花火とキャンプファイヤー、そして「運転する人だけが飲めないのも気の毒」ということで酒類ぐらいだ) 書記として「持って行くもの」をホワイトボードに書き出していた神田が呟いた。 「これ全部持って電車乗るんですか?」 ボードいっぱいに書かれたグッズの数々をよく見ると、確かに凄い荷物になりそうだ。 そこで誰か車を出せるかという話になった。 現役会員は恵子を入れて13人、4年生とOBが何人か来ることを考慮すると、出来れば4台欲しい。 荻上会長の知る限りでは、現視研で普通免許を持ってるのは全員OBだ。 恵子「試しに訊いてみようよ。誰か免許持ってる?」 意外なことに新1年生たちには、入学して4ヶ月足らずのこの時期に、普通免許を取得している者が6人も居た。 彼らは皆、大学合格の直後から自動車学校に通っていたそうだ。 彼らの親は皆、むしろ本人以上に免許取得に積極的だった。 大学に入ってからは、いろいろ資格取る為の勉強するだろうから、普通免許ぐらいは早目に取っておけということらしい。 就職難の時代ならではの現象である。 6人とも実家に車があって多分貸し出せると言う。 では誰の車で行くかという話になり、先ず伊藤が名乗りを上げた。 「僕は泳げないから泳がないニャー。だから疲れないから帰りも安全運転だニャー」 彼の発言によって免許持ちで泳げない人を募った結果、先ず有吉、沢田、そして伊藤の3人が車を出すことになった。 残りの1台を提供したのは、傍らで昼飯を食っていた斑目だった。 「俺も泳げないし、その日は休みだから行くわ。それにこういう時にでも使わないと、車もったないしな」 斑目の車は、社長からもらった中古の軽だった。 何でも今期はボーナスが無かったので、その代わりということらしい。 もらったはいいが、彼は日々の生活に車を使う機会は少なかった。 相変わらず徒歩で通勤していたし、仕事中使う車は会社のものだ。 (最初は人手不足で外回りの仕事を手伝っていたが、今では外回りの仕事の方がメインになりつつあった) 車が要るような大規模な買い物は滅多にしないし、助手席に乗せる彼女もいない。 かと言って売ってしまうのも悪い気がする上に、どのみち古過ぎて売れそうになかった。 こうして今回現視研の面々は、4台の車に分乗してやって来た。 駐車場に車を停め、男子会員が中心になって場所取りと荷物の運び出しが始まった。 先ずビニールシートで場所を確保する。 よく見るとそれは、大きな一枚のブルーシートだった。 それを畳んで横に細長い形に陣取る。 普通のビニールシートを3枚ぐらい並べた程度の面積だ。 斑目「まるで殺人事件の現場だな」 次にシートの中央部が日陰になるように、アウトドア用の屋根だけのテントを設置する。 続いてシートの端にパラソルを広げる。 そして荷物の大半をテント下に運び入れる。 パラソルの反対側の、シートの端っこから3分の1程度のスペースは、日焼け用にわざと日陰から外してある。 妙に手馴れたセッティングぶりだ。 後で聞いたところによると、場所取り関連のグッズは浅田と岸野が高校の写真部から借りてきたそうだ。 その写真部は年に何度か撮影旅行や合宿を行なっていて、この手のグッズには事欠かないし、2人もその取り扱いに熟練しているのだという。 運び終わった荷物の数々を見て、荻上会長は慄然とする。 『これ全部、今日1日でやるの?』 表で見た時にはピンと来なかったが、改めて並べてみると凄い量だ。 スイカ、金属バット(スイカ割りの棒代わりだそうだ)、ビーチバレーのボールとネット、浮き輪、ゴムボート、エアマット、アウトドア用の大型コンロ、クーラーボックスに入った食材、その他の調理器具、そして十数個のサッカーボール、等々… 『なしてサッカーボールが?』 不意に肩を叩かれて顔を上げる。 大野「どうしたんですか、荻上さん?笹原さん来なくて寂しいんですか?」 荻上「(赤面)そっ、そんなんじゃねっす!」 本音を言えば寂しいことは寂しい。 だが笹原の盆休みと夏コミの日程が重なり、少なくとも夏コミでは一緒だから我慢出来る。 それに平日休みの笹原と、何とか時間をやりくりして会う生活を繰り返す内に、何日か会えないシチュエーションにも耐性が付いてきた。 それに今の自分は、会員たちを監督し見守る立場だ。 (とは言っても、こんな遊びの場であれこれ指図する積もりは無いが) 上に立っている者が、下ほったらかしでイチャイチャしてる訳には行かない。 こういうことに関しては、相変わらず荻上会長は生真面目だった。 大野「(笑って)分かってますよ。(荷物を見て)それにしても凄い荷物ですね」 荻上「今日じゅうにこれ全部やれっかなあ…」 大野「大丈夫ですよ。まだお昼には時間あるし」 荷物が運び終わり、1度全員集合する。 恵子が新調したビキニを1年生たちに見せびらかしている。 恵子「いいっしょ、これ?春日部姉さんの店でもらったんだ!」 本当にもらったのか、春日部さんの方はあくまでもツケで売った積もりなのかは定かではない。 あとの女子会員たちは全員無難なワンピースだ。 「荻様かわいい~!!」 例によって巴と豪田が荻ハグすべくダブルで突進して来る。 だがさすがに慣れたらしく、軽やかなフットワークでかわす荻上会長。 結果巴と豪田は誤爆して、互いにハグしあう破目になる。 すぐに離れるかと思われたが、2人とも体がきしむ音がしそうなほど強く抱き合っている。 巴・豪田「こっ、これはこれで、なかなか…」 恵子「やめんか!」 2人をどついて止める恵子。 一方男子会員たちは、少し赤くなりつつも女子会員たちを見つめていた。 だが巴に視線を向けた彼らの目には、軽い失望の色があった。 その空気に気付いた豪田がツッコむ。 豪田「なあに、そんなにあたしのビキニが見たかったの?」 男子一同『んなわけねえだろ!』 まあ確かに、水中用モビルスーツみたいな豪田がビキニを着ても、ボンレスハムみたいになるだけだ。 スレンダーな台場、神田、国松、沢田はともかく、巴の巨乳はぜひビキニで拝みたかった、というのが男子たちの本音であった。 地味な競泳用の水着の巴は妙にソリッドな感じがして、巨乳というより大胸筋が丸く盛り上がっているみたいで、あまり色気は感じられなかった。 もっとも巴に比べれば貧弱な体格の1年女子たちも、みんなそれなりに顔立ちは整っていて全体的にスレンダーなので、出るべきとこが不足気味でもなかなか目の保養になる。 一方もう1人の巨乳、大野さんも相変わらず無難なワンピースの上、上に羽織ったシャツを脱ごうともしない。 荻上「コスプレの時は、あんなに露出してるのに…」 コスプレイヤーとしての大野さんと、個人としての大野さんとには、羞恥心にえらく差があることは長年の付き合いで分かっている。 だがそれにしても、大柄で巨乳の大野さんが1年生たちよりも恥ずかしそうにしてる図は、何とも違和感があった。 昼食と帰りの集合時間を決め、後は自由行動として解散する。 結局ブルーシートには、荻上会長、大野さん、田中、沢田、伊藤、有吉が残った。 他のメンバーはさっそく泳ぎに出かける。 伊藤と有吉は互いの背中にオイルを塗り合い、さっそくシートの日なたの部分で寝転ぶ。 荻上会長と沢田は、そんな2人を見て一瞬軽くワープしつつも、テント下で自分の体に日焼け止めを塗っていた。 大野「荻上さんは泳がないんですか?」 荻上「私、皮膚が紫外線に弱くて、軽く焼いてもすぐ真っ赤っかになっちゃうんで、こういうとこではあまり長いこと日なたに出れないんです」 それは本当だった。 荻上会長は3歳の時、家族で海水浴に行ったことがあった。 他の地方に比べて日差しの弱い東北地方の海水浴場で、家族と一緒に普通に海水浴しただけなのに、その日の晩の風呂や布団の中でのたうち回り、その後何日か皮膚科に通う破目になった。 それ以来今日まで、海水浴というものに行ったことが無かった。 家族のレジャーのメニューからは自然消滅し、友だちに誘われても断った。 プールでの水泳の授業すら、念の為に日差しの強い日には見学する徹底ぶりだ。 ちなみに医師の診断によると、どうも皮膚が神経過敏気味で極端に敏感らしいとのことだった。 だから笹原との初めての時も、そりゃあもう… 話を海水浴場に戻そう。 沢田「荻様も太陽ダメなんですか?」 荻上「沢田さんもそうなの?」 沢田「私の場合は、あまり長いこと日に当たってると立ちくらみするんです。ここ数年、夏休みはずっと部屋にこもって原稿書いてましたから」 田中「まるでドラキュラだな」 大野「それにしても…」 ブルーシートの上と海の方を交互に見る大野さん。 大野「3年前ここに来た時って、まともに泳いでたの3人ぐらいでしたよね」 田中「ああ、確か春日部さんと高坂君、それに恵子ちゃんか。あと、笹原が最後にちょっとだけ泳いでたかな」 荻上「で、あとの方は何をなさってたんですか?」 田中「パラソルの下でガンダムしりとりやって、ちょっとだけ水浴び。俺と大野さんは砂の城作り」 荻上・沢田「海水浴場でガンダムしりとり…(汗)」 田中「それに比べて、今年の1年たちは元気だな、8人も泳ぎに出てるんだから。(大野さんに)今回はどうしよ?」 大野「昼バーベキューやるから、先に準備しときましょう」 結局大野・田中コンビは昼御飯の用意を始める。 沢田が手伝おうとしたが荻上会長はそれを止め、2人に軽く会釈しつつ見送った。 荻上「あのお2人が何かやってらっしゃる時は、頼まれない限り手伝わない方がいいわよ」 楽しそうに笑う2人を見て納得する沢田。 沢田「そうですね、何かお邪魔しちゃ悪いみたいですもんね」 荻上会長を見る沢田の目付きが、不意に妖しいものに変わった。 沢田「ところで荻様、(日焼け止めを持って)お背中の方は私に塗らせて下さい。ささ、うつぶせになって下さい」 荻上「あっそう…そんじゃお願い」 とまどいつつも、うつぶせになる荻上会長。 その白い背中を、沢田の手が妖しく這い回る。 日焼け止めを塗るというより、愛撫しているような手付きだ。 荻上「ちょっ、ちょっと沢田さん!手付きが変!」 沢田「荻様って肌きれい。素敵!」 いつの間にか紅潮して息が荒くなっている沢田、思わず覆い被さる。 荻上「(最大赤面)ひへっ!?」 沢田「荻様~!」 不意に荻上会長の背中から負荷が消えた。 恵子が沢田の耳をつまんで引っ張り上げたのだ。 沢田「痛たたたたたたた…」 恵子「(耳から手を放し)ったく、レズっ気あるのは蛇衣子とマリアだけだと思ってたのに、お前もかよ!」 沢田「申し訳ありません。荻様肌きれいだからつい…」 恵子「頭冷やしがてら、ジュースでも買って来い!」 沢田「はーい」 麦藁帽子を被って、沢田はテントから出て歩き出した。 恵子「ったく。(シートに腰下ろして寝転び)あー疲れた、もう泳ぐのはいいわ」 荻上「もうそんなに泳いだんですか?」 みんなで海に入って行ってから、まだ30分も経ってない。 恵子「あいつらのペースでやってたら死んじゃうよ。ノンストップでガンガン泳いで沖まで行っちまうんだもん。これは水泳の授業かっつうの」 荻上「へえ、そんなに…」 恵子「オタクなんて運動音痴ばっかしと思ってたのに…」 どうやら泳ぎ出すまで、野球出身の日垣と、ソフト出身の巴を忘れていたようだ。 荻上「11人も居るんですよ、1年生。そりゃいろんな人が居ますよ」 恵子「そりゃそうだわな。さて、あたしも焼くか」 日なたに出てる方のシートに移動し、伊藤の隣に寝転ぶ恵子。 たじろぐ伊藤。 トイレにでも行ったのか、有吉は席を外していた。 恵子「伊藤くーん」 伊藤「ニャッ?何でしょう?」 恵子「(うつぶせになってビキニの紐を外し)オイル塗って」 伊藤「(赤面し)ニャニャニャ?!」 恵子「つべこべ言わずに塗る!」 伊藤「かしこまりましたニャー」 女性の背中にオイルを塗るのは初めてらしく、赤面しつつ怖々した手付きで塗る伊藤。 恵子「ちょっと、くすぐったい(笑)」 そこへ戻ってきた有吉、2人の様子を見て硬直している。 有吉「伊藤君…前々から怪しいとは思ってたけど…」 こける一同。 荻上・沢田「(ハモって)怪しいんだ…」 実はこれ以前から、恵子は何かと伊藤をこき使うことが多かった。 もちろん恵子は特別彼を意識している訳ではなく、居れば1年生なら誰でも(いや厳密にはクッチーや斑目すら平気で)こき使っていたが、恵子と目が合うとビクッとする猫的な動作ゆえか、伊藤が頼まれる確率は高かった。 伊藤「ごっ、誤解だニャ!」 恵子「ちっ、ちげーよ!そういうんじゃねえから!」 有吉「邪魔しちゃ悪いから、僕は席外すね」 立ち去りかける有吉。 伊藤「待って有吉君、誤解だって!」 追いかけて引き止める伊藤。 恵子「お前らなあ…」 立ち上がりかける恵子、うっかりブラの紐を解いたままなのを忘れて一瞬ポロリ。 恵子「おっといけねえ!(ブラを直す)ん?」 2人はポロリを見てしまって、赤面したまま気絶していた。 恵子「あーあ、しょーがねーなー。童貞君にはチト刺激が強過ぎたか」 その時ふと背後に嫌な視線を感じ、恵子は振り返る。 そこにはジュースを買って帰ってきた沢田が、これまた赤面していた。 沢田「有吉君が、伊藤君を恵子先輩に盗られたと嫉妬して…ハアハア」 恵子「違うっつーの!彩、落ち着け!姉さん、こいつ何とかして!」 だが恵子の呼びかけも空しく、荻上会長の意識もまた何光年か彼方に向かって、亜空間を超光速で移動中だった。 恵子「あちゃー姉さんもワープ中かよ…(近付いて筆毛を激しくシビビビし)こら筆!目を覚ませ!戻って来い!」 荻上「はっ!ここは誰?わたすはどこ?」 恵子「ったく、腐女子ってやつぁ面倒見切れねえなあ…」 いつの間にか恵子は、かつての春日部さんのように、現視研のオタ常識と一般常識との橋渡し的な役割を引き受ける破目になっていた。 正気を取り直した荻上会長は、テントを離れて各人の動向を見に出かけることにした。 冒頭のシーンで被っていた、大きな麦藁帽子を被り、パーカーを羽織る。 とりあえず有吉の誤解は解け、恵子たちは再び日光浴に精を出し、沢田もパラソルの下で寝ていた。 そこへ浅田、岸野、日垣、国松、神田、台場の6人が戻って来た。 全員えらく疲れてる様子だ。 17人いる!(後編)
https://w.atwiki.jp/unofficial_project/pages/124.html
日時 2009年2月7日(土) 場所 千葉・房総 ツアータイトル キューティー観光社バスツアーin房総 使用物 ピンク・オレンジ・紫のサイリウム 企画内容 紆余曲折あったが、最終的に℃-uteメンバーの指示によった。詳細は後述。 mixiコミュ [mixi] ℃-uteFCツアーで御祝い!!(コミュ管理人曰く「情報収集のために立てた」とのこと) →[mixi] ℃-uteバスツアー合同生誕企画 2008/12/19作成 個人的な考えですが、構成が読めないFCツアーで、おまけに今回は祝う対象が過去に例が無い3人まとめてとあって、ファンが下手に動くよりも、ベリ3周年の時のようにスタッフが何かやってくれることを期待した方がいい気がします。 既に矢島さんが「私と舞となっきぃの誕生日を祝う~」と発言しているようですし。 12/27追記 別の方が新たにコミュを立ち上げられ企画を進めていくことになったようです。 ベリコレ千秋楽企画と同じ企画者です。 01/15追記 企画案の議論が始まっています。 3色(オレンジ・ピンク・紫)のサイリウムを使うことはほぼ確定のようです。 01/16追記 企画内容が確定しました。 ライブ中のMCにて一人ずつ話す時に、舞美ちゃん(ピンク)なっきぃ(オレンジ)舞ちゃん(紫)のサイリウムでそれぞれお祝いします。 さらに7人全員のMCが終了後、会場内を3分割して3色に染めたいと思います。 [mixi] ℃-uteバスツアー合同生誕企画 | 1/17 お知らせ 1,000本×3の3,000本のサイリウム発注に向けて動いているようです。 配布をどのタイミングでやるのかや事務所への連絡のことが話題に出ていないことが心配です。 当日の様子 出発前(東京駅)で各参加者がバスに乗り込む時に、サイリウムと企画告知のビラを配布。 出発後、バス内でのVTRにてライブ中に行なうサプライズ企画について説明される(FCによるもの)。 内容は、白浜フラワーパークにて大きなメッセージボード3枚に参加者がそれぞれへのメッセージを書き、ライブ終了後にそれをステージ上から降ろし、一人ひとりにハッピーバースデーを歌う、というもの。 これを受け、メッセージボードが降りてくる時は三色を、それぞれにハッピーバースデーを歌う時はそれぞれの色のみを掲げる、と企画内容が変更されたようです。 →ファン側の企画の指示の変更は「3色同時に掲げる」だったとのことです。それぞれにハッピーバースデーを歌う時にそれぞれの色のみを掲げたのは自然発生、もしくは客席に下りたメンバー4人もそうしていたことからメンバー主導だったかもしれません。(このあたりの流れは全てメンバー主導) →事前にステージ上から4人が指示していたそうです。(2009/11/05追記) 変更の告知は、各バスの先頭にその旨を書いた紙を貼って知らせていたとのことです。 2009/07/11追記 当日配られたビラの文面から一部引用(全文はリンク先参照) 《企画案》 2/7のキューティーエキスパートショーのライブ中のMCにて一人ずつ話す時に、それぞれのイメージカラー(矢島さん→ピンク、中島さん→オレンジ、萩原さん→紫)のサイリウムでそれぞれ一色に染めてお祝いします。MCのタイミング、回数等も不明なので7人揃ったMCがあれば前半後半すべてのタイミングで行いたいと思います。 さらに7人全員のMCが終了後、会場内を国旗のように縦に3分割して3色に染めたいと思います。例:サイド(ピンク)センター(オレンジ)サイド(紫) ※配色・席番を何番で区切るかは当日会場内にて企画担当者達がボードで告知致します [mixi] ℃-uteバスツアー合同生誕企画 | 当日配布のビラ完成 《アンケート用紙について》 キューティーエキスパートショーで歌って欲しい一曲のアンケート用紙がありますが、3人の誕生日と言う事もあり出来れば持ち歌を歌わせてあげられたらと思います。 ただ、皆さんそれぞれ他に歌って欲しい一曲があると思いますので、あまり強くはお願い出来ませんので賛同していただける方だけ下記の3曲のうちのどれかを選択して書いて頂けたら幸いです。 夏DOKI リップスティック(矢島) ディスコクイーン(中島・萩原) 晴れのプラチナ通り(中島・萩原) ※もしこの3曲や他の各ソロ曲等がライブ中ありましたら、配布したサイリウムにて各自対応お願い致します [mixi] ℃-uteバスツアー合同生誕企画 | 当日配布のビラ完成 このようなレポを見つけました。 何故こんな事を言うのかというと、実は℃-uteバスツアーの時とてもムカツク出来事があったからです。 この日は℃-uteファンなら誰もが待ちわびた特別な日。自分もイラストを用意したり、3人のイメージカラーのサイリウムを持参したりと、自分なりのお祝いを思い描いていました。 当然大々的にやろうとする例の企画軍団もいました。3色のサイリウムをみんなに配る、まぁこれはいい。 しかし次の瞬間企画者の一人が信じられないことを口走りました。 「アンケートの曲ではなるべく夏DOKIリップスティックとDISCOクイーンを書いて下さい!」 はぁ??? メンバーがお願いしたのか?何でその曲じゃないとダメなんだ??? そうしたいと企画者が勝手に思ってるだけだろう。プロデューサー気取りもはなはだしい! この勘違い企画者たちの暴走は止まらない。。。 ライブ会場に着いて座席に座ると、サイリウム点灯について事細かに指示が出されます。MCの時はそれぞれの色、等々。 そして次の瞬間テロ攻撃とも思える発言を耳にすることになります。 「3人が壇上に揃った時、左のブロックの人はピンクを真ん中のブロックの人はオレンジを、右ブロックの人は紫をお願いします」 この意味不明の発言にブチ切れました。 自分は真ん中ブロックだったのでオレンジでした。そこで「何で推しメンの色をだせないんだよ!!」 すると企画者は「キレイに揃えたいんです!!」 はぁ?誰が揃えたいんだ?お前が揃えたいだけだろ? メンバーが揃えたいって言ったら自分だって喜んでやるし、別にオレンジを上げるのが嫌って訳じゃなかったんです。ただこの余りの勘違いぶりに甚だ腹が立ちました。ちなみに自分の隣にいた人もなぜそこまで束縛されるんだと相当キレてました。 誰が言われた通りやるか! しかしこの企画は未遂に終わりました。℃-uteってのはある意味ヲタよりも℃-ute大好きで、メンバーの楽しませ方、盛り上げ方をよく知っている。 3人が壇上に並んだ時、梅さんはじめ℃-uteメンバーがとった行動は、3色のサイリウムを掲げる。実に楽しそうに振ってる梅さんたちの姿に、こういう嫌な事があった後だけに心から嬉しく思えました。 「そうだよ!これが大正解だ!!!」 そう唸ると共にますます℃-uteってグループが好きになりました。 誰がためのサイリウム企画 - Maiming Glory?~矢島舞美&℃-ute応援ブログ~ 知り合いに確認したところ、(変更後の?)指示は3本同時だったと思うとのことでした。 なので、リクエスト曲指定やブロック別色指定がなされたのは企画側で統制が取れていなかったのではないかと思われます。 もっともこれが元々の企画内容ですから、元々の内容を実行しようとした場合はもっと多くの反発があったのではないかと予想されます。 リクエスト曲を指定するお願いの箇所は、「もし該当メンバーのソロ曲や二人で歌う曲が歌われることになれば該当の色のサイリウムを~」という内容が良かったのではないかと思います。 ブロック指定や特定の席の人だけ違うことをするという内容は避けるべきですね。 個人的な思いつきですが、FCツアーではその性質上、サイリウムだけ配ってあとは流れと各人の自由意志に任せる(何もしない可能性も。)というやり方もアリだと思います。 - 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/genshikenss/pages/219.html
Zせんこくげんしけん1 【投稿日 2006/03/12】 せんこくげんしけん 【2005年8月8日/19 45】 斑目は力なくアパートのドア開けた。一日の仕事を終え、外で適当に夕食を済ませて帰ってきた。上着をベッドに脱ぎ捨てて、イスにどっかりと腰を下ろし、フゥとため息をついた。 疲れる一日だった。仕事で、ではない。 いつも通りに現視研部室で昼食を取っていた時、大野がアメリカ人を連れてきたのだ。しかも2人も。しばらく自分一人での対応(というか流されるまま)だったので、午後のスタミナも奪われるような脱力感があった。 後でやってきた咲は、自分とは対照的に流暢な英会話で会話をしていたというのに。 斑目は虚空をうつろに見つめながら、「ケョロロ将軍ねえ……」とまた独り言。話題のアニメが気になるわけではない。彼女と自分との能力格差が、今頃になって心に小さな穴をつくっているのだ。 「あ~あ、かなわねーなァ!」イスの上で背伸びをした斑目は、1枚の封筒を手にしたが、中の「あの写真」を取り出すことはなかった。「眺めたところで、何が変わる……」 斑目は自分の気持ちを高ぶらせ、憂鬱な気分を珍しく速攻で振り払った。 「ええい、気を確かに持て。そんなことはどうでもよいではないか! 立てよ俺!」 12日からコミフェスが始まるのだ。しかも社会人になった今年は、額こそ少ないがボーナスも入った。これを同人誌につぎ込まないで何になる。斑目はギラギラした目つきでコミフェスのパンフレットに目を通しはじめた。 その中でひときわ目立つ告知は、同人誌の“業界”を席巻する大物「Hi」のもの。ここ2年ほど、801をメインに、大物作家を使って次々に流行を生み出すプロデューサー的な人物だ。「Hiは、今年は801だけか…」 その時、急にデスク上の携帯電話が小刻みに震えだす。ディスプレイを見て小首をかしげた。 「公衆電話…?」 電話に出ると、『斑目、斑目か?近藤だけど!』と、うろたえた様子の声が聞こえてきた。アニ研OBだ。 「あー近藤さん、久しぶり。どう?仕事の方は慣れた?」 『それどころじゃないんだ。サークルが変だ。OBの手には負えん……アニ研も“すでに押さえられた”。俺は明日大学事務に相談する』 「何の話?」 『気をつけろ……狙いは現視研の……』 (ガガッ!……ガチャ!!)「近藤さん?」 (ツー…、ツー…)その夜、再び電話がかかってくることはなかった。 【8月9日/11 30】 夏期休講中。直上からの日差しがコンクリートを焼き、日陰のコントラストをハッキリとさせている。ジワジワ、ジージーとセミの鳴き声は止むことがない。 人気の少ないサークル棟3階の現視研部室では、団扇を片手に語りあう笹原と荻上の姿があった。夏のコミフェスで大野が売り場に立てなくなったので、急きょ2人で会合を持つことにしたのだ。 笹原は、「今回の主役だから」とテーブルの一番奥に荻上を座らせ、自分はその右手に座った。 笹「まあ、ちょっとした動きの確認だけだからね」 荻「はあ」 笹「それにしても今年は猛暑だね。地球温暖化だね…ははは」 荻「そうでしょうね」 座る位置からちょっとした話まで、気を使っている笹原と、愛想の無い荻上の、たわいもない会話が続く。 そこに、「ここで良いから寝かせてくれぇ」とうめきながら、咲がやってきた。まだまだ自分の店の開店準備で忙しいらしく、目にクマを作って疲労困憊の様子。 が、笹原と荻上しかいないことに気付き、「あらあらー、2人で何やってんの?」と、笹原の向かい側に座ってさっそく茶々を入れる。 「打ち合わせです」と味も素っ気も無い荻上。咲はニヤニヤしっぱなしだ。 何かを期待している。荻上にはそれが嫌なほど感じられる。(先輩誤解してる)とは思う。しかし、(自分自身はどうなの?)(嬉しくはないの?)と自問するが、怖くて自分の心に素直になれなかった。 ガチャ、部室のドアが開いた。 「や~久しぶりだね」と、顔をのぞかせたのは、なんと“あの”原口だった。 「!?」あまりに意外な人物の登場に3人は言葉も無い。むしろ(コイツいまだに学内ウロウロしてるのか)とあきれて言葉も出ない。 笹原は先日、荻上の部屋での打ち合わせで、「結局あの人どこで何してっかわかんないし」と原口を評したばかりだった。 全ての人には見えない線が繋がっていて、想ったり噂したり、何かが起きた時に、その線を通じて相手に通じるという話を聞いたことがある。「虫の知らせ」なんかもその類いだという。笹原は、その話を思い起こして自分の発言を後悔した。 「……何か、用ですか?」と訪ねる笹原は無視して、原口はドア直近のイスにどっかり腰を下ろし、荻上に向けて言葉を発した。 「荻上さんだっけ? “あなたのとなりに”はもうミナミ印刷に入稿したんだっけ?」 荻上の表情が青ざめる。まだ笹原にも大野にも伝えていない自分の同人誌のタイトルではないか。「!?……なんでソレを知ってるんですかッ!?」と声を荒げる。 原口は、気にも留めず、「麦男×千尋というのは使い古されたパターンで新しさはないけれど、キミの画力で見せてるよねぇ。あれはね、しっかり宣伝すれば売れるよ」と続けた。 もう荻上は言葉が出ない、両肩はワナワナと震え、原口をにらみ据える瞳には涙がにじんできた。 (……誰にも見せてないのに……あの人にも決して見せないと……) (汚された!) ガタンッ!とイスを弾き飛ばすように立ち上げる荻上を、咲が支えるように押しとどめ、「アンタ、ちょっと無神経じゃねーの!」と原口に向けて口を尖らせた。 「ああ、ごめんごめん、あんまりいい出来だったんでね。もったいないよね。小さな印刷所で50程度の発行部数なんて、儲からないよ~」 傷つけられた人間への配慮はまったく感じられない。 原口は本題に入った。 「そこでね、僕のツテで、トッパンで1万5千部印刷させてあげるよ、ミナミ印刷発注分は僕が買い取るから心配いらないよ。それでもまだ利益を得られるんだからね」 笹原は驚いた。編集者を目指す上で印刷業界のことも少しは勉強している。トッパンといえば日写と並ぶ印刷業界最大手ではないか。しかも1万5千なんてベラボーな数字だ。大手で個人誌を大量印刷なんて前代未聞、いや不可能だ。 思わず、「……そんなこと、できるわけないじゃないスか。第一、荻上さん個人の趣味の本ですよ。売るために作るわけじゃない……」と、腹の底から絞り出すような低い声が漏れた。 「それは売り方を知らないからだよ。君はいつまでもオナニーだな」原口は切り捨てるように返し、「聞いたことないかなあ。2年前から同人業界で新しいムーブメントを作ってる“Hi”って。あれ、僕なんだよね」とサラリと言った。 「大物作家に2、3原稿上げてもらってるから、そこのメインに荻上さんのマンガを入れる。さっそく刷って、製本を行ってギリギリで出す。僕がプロモーションをかけるから売れるよ~」 荻上を売り出す気らしい。 笹原はいい加減腹が立ってきた「荻上さんのことを何も知らない癖に、何を言ってるんだ!」強い語気で迫った。 「知ってるよ。少なくとも3年前からね……荻上さんが何を書きたいか、キミより理解しているつもりなんだけどね」 原口は、自分のカバンから、古ぼけた一冊のノートと同人誌を取り出した。 「!!!」荻上は驚愕する。原口が持っているノートは、今、自分の手元にあるノートと全く同じ物……。 いや、ノート自体は市販品だから「同じ商品」かもしれないが、それと一緒に掲げられたのは、まだ印刷もされていないはずの、同人誌「あなたのとなりに」製本版ではないか。 荻上は、ふらふらと後ずさりし、気を失いそうになった。咲も立ち上がって背中を支える。笹原も無意識に立ち上がっていた。 原口は続ける、「ボクならキミをメジャーにしてあげられるんだよね荻上さん。プロになれる。儲かるよボクと組むと」 荻上は気力を振り絞り、「誰があなたみたいなオタクと!」と叫ぶ。 「出版社にもアタリは付けてるんだ。友達にキミの腕前なら買ってもいいっていう編集者も居てねぇ。現役大学生作家として大いに売り出そうよ」 「嫌!」荻上は涙をポロポロと流しながら叫ぶ、もう立っているのもやっとだ。 笹原は、普段の彼からは想像もできない刺すような視線を向けて、「原口さん……帰ってください」とだけ呟いた。咲も怒り心頭の表情を向ける。 席を立つ原口、「仕方が無いなあ。もちろん学生の間は、現視研の活動扱いにして利益を還元してくれれば、学内サークルも大いに助かるんだよ?」 「だからッ……」原口は叫びそうになる笹原の発言を押しとどめ、フゥとため息を付いて目を細める。 「残念だけど、ゴネるようなら君たちは“解散”…だ」 ドンッ!とドアが乱暴に開き、見知らぬ男達が部室に入ってきた。3人、黒塗りのマスクをかぶっている。 咲「はい? マスク? 何コレ?」 原口は部室占拠の暴挙に出た。「サークル自治会といくつかのサークルは、ボクの提案に賛成してくれてね」と語る。 マスクマンは助っ人だ。「あんまりゴネるとこちらのプロレス同好会の皆さんが黙っちゃいないけど?」と強気に出た。 異様な緊迫感が部屋を包むなか、ガチャ! とドアが開いた。 「イルチェーンコ!シェフチェーンコォォォォォオ!ヘローヘロォ!」と体いっぱいに己の精神性を表現しながら朽木が現れた。 部屋中の誰もが、マスクマンの皆様も、朽木の狂態に顔中に汗をしたたらせて耐えた。 「アレ……ドシタの皆さん? おおっ、スーパーストロングマシン(マスクの人)が3人も!」朽木は状況が飲み込めないまま一人で盛り上がり始めた。 この隙をついて、咲は荻上の手を取り、腰を低くして男達の前をすり抜けた。「ササヤン!」と叫ぶ咲の声に反応して、笹原も駆け出す。しかし咲に連れられた荻上は足がもつれ、原口に肩を掴まれた。 「!」咲は荻上の手を離してしまう。 ドアから出かかった笹原が手を伸ばす。荻上も思わず手を伸ばす。 「荻上さん!」「ささは……ッ!」 しかし、視界にガタイの大きなストロングマシンが横切り、二人の手は振払われた。 笹原の片手は咲に引かれて部室の外に、訳も分からずその場の勢いで走る朽木を先頭に、咲、笹原は部室を飛び出した。 騒ぎが収まった部室を、サークル自治会長の木村が訪れた。左手が不安げにTシャツの端をいじっている。 「こ、これで良かったんですかね」という木村に、原口は、「みんなの利益のためだからね~、一部の人には我慢してもらわなくちゃね」とにこやかに笑った。 「じゃあ、今日からここは、“新現視研”ということで。あ、木村君、アニ研から沢崎君呼んできてよ。彼にここを任せるから」 どんどん話を進める原口の傍らで、荻上は抜け殻のように放心状態で座っていた。男達が騒がしく右往左往する中で、彼女だけ時間が止まったように動かない。ただ涙だけがスルスルとその頬を伝って落ちた。 視線の先には、まだ製本されているはずのない「あなたのとなりに」が1冊、無造作に置かれていた。 【8月9日/12 05】 昼休み。斑目はいつものように部室に向かう。しかし今日は、前夜の電話が気掛かりで、誰かが部室に出てくるのを期待していた。 サークル棟に向かう道すがら、別の門から学内に入ってきた恵子とバッタリ出くわした。 「あ、君もこれから部室デスカ」 「悪い?」 斑目は、(コイツじゃ事情は分かんないよなあ)とうなだれながら再び歩き始める。恵子は斑目の少し後ろを歩き、携帯をいじったり、無意識に斑目の手に揺られているコンビニ袋に視線を落としている。 別に語ることもなく、2人がサークル棟の階段を上り始めた時、恵子が沈黙を破った。 「あのさー」 「はい?」 「本っ当にこのサークルって合宿する気ないの?」 斑目は、階段を登る歩みを休めることなく、「この前も言った通り、我々にとって夏といえばコミフェスですよ。合宿にまわす金などない。あと……俺OBだよ。決定権ないし」と、素っ気なく答えた。 「第一、キミは他にも夏にアチラコチラへ連れてってくれるイカツイお友達くらい沢山いるでしょうに!」 ちょうど踊り場にさしかかった時に、寂しげな口調で答えが返って来た。 「ココの面子だから、いいんじゃん……」 斑目は立ち止まり、ハタと恵子を見て(あ、俺また無神経なこと言っちまったよ……)と自分の舌禍を後悔した。 恵子は慌てて、「あー、ホラッ、何はなくともコーサカさんいるし……」と取り繕ったが、すぐに、「……まあ、最近は何つうか居心地がいいんだよね。みんないい奴ばっかりだし。キモイのもいるけどね……」と本音が出た。 (素直なんだな)斑目は少しばかり恵子を見直し、「ああ、俺もだな。居心地いいのは同感だ」と、自分の気持ちを吐露した。 「だから就職しても寄生してるんだ」 「キミウルサイ」 階段を上り切って3階の廊下に出た時、斑目の背後でヴヴヴッという振動音が聞こえ、恵子が携帯を取り出した。 「あ、ねーさんだ」との言葉にピクッと反応する斑目だが、部室の近くで3、4人の男がざわついているの見て立ち止まった。 直後、恵子が斑目の半袖ワイシャツの端をクイッと引っ張った。 「何か、ヤバいみたいよ……ねーさんが部室に近寄るなって」 「もう、遅いんじゃないかなァ?」 すでに斑目の前には、久しぶりに目にする“嫌な男”が歩み寄っていた。 【8月9日/12 20】 「新現視研!?」部室前の廊下で原口の話を聞いた斑目は、耳を疑った。 「同人誌の件、荻上さん自身は納得してるんですか?」「ほかの現視研メンバーの同意は?」との質問にも原口は、のらりくらりと答えるばかり。鈍い斑目でも、昨晩の近藤の電話はこの件だったのかと推測した。 原口からは、「まあ斑目も、いつまでもこんな所をウロウロしていないで、仕事に戻ったらどうだ」と、痛いところを突かれた。(あんたも社会人じゃねーのか?)と心の中で突っ込みつつ、斑目はいつも通りの低姿勢で穏便にやり過ごそうと話をしていた。 納得いかないのは恵子だ。 「斑目サン、誰よこのデヴ!」 原口は細い目をさらに細めて恵子にらみ付けてから、斑目に向き直り、「何だ、この躾のなってないコギャルは?」と問いただす。 「笹原の妹デスよ……」 恵子は収まらない。「斑目もこんなのに敬語使う必要ないんだよ。ふざけんな“せっかくの居場所”をかき回すんじゃねーよ!」と噛みつく。 「居場所?」原口が反論する「この現視研は君らがタムロするための場所じゃないんだ。もっと有効に“活用”するために整理させてもらったんだよ」 部室のドアが開き、斑目にとって見覚えのある顔が出てきた。沢崎“新会長”だ。 驚く斑目に沢崎は、「今日のところはお引き取りください。あなた達学外の人間にとやかく言われる筋合いはないんです」と話に割って入り、「原口さん、ちょっと……」と呼んだ。 斑目は、原口の「さ、帰ってくれ」の言葉に黙ってうなずき、「ハイハイ、分かりましたよ……」と言いかけて、沢崎が空けたドアの向こう、部室のテーブルの一角に、無表情で座っている荻上の姿を見た。 荻上も、ハッと隙間から覗く斑目に気付き、2人の視線が交錯した瞬間、ドアは堅く閉ざされた。 斑目は険しい顔つきで、ドアの向こうをにらむ恵子の腕を取り、来た道を引き返しはじめた。 (今日の午後は代休になっちまうな)と斑目は思った。恵子の携帯に入ったメールには『学内にいる現視研は稲荷前に集合セヨ』とあったのだ。 部室内で沢崎は、部室の鍵を取り返す必要があるのではないかと原口に尋ねた。 「今日来ていた誰かが持っているかも知れないな。捜させよう」こうして原口の息のかかったサークルが、大学内で現視研を追いつめるべく動き出した。 【8月9日/13 00】 椎応大学の主な出入り口は、サークル棟に一番近い東端のテラス門、近所の動物公園につながる北門、そして南側の正門、西門の4カ所がある。 原口・沢崎による新現視研と一部サークルは、現視研メンバーの脱出を許さない構えだ。同調するサークルの人間が、普通の素振りをしながら見張りに立っていた。 しかし、その「見張り」が問題だった。 みんなプロレス同好会謹製の「スーパーストロングマシン」マスクを着用しているのだ。しかも緑色、量産型だ。実に分かりやすい。 椎応大学内には、緑豊かな茂みの中に、稲荷の小さなほこらが建てられている。咲、笹原、朽木はそこへと逃れていたが、話題は“追っ手”の容姿に及んでいた。 咲「あいつら、本当に馬鹿なんじゃないの?」 朽木「いやいや、悪の組織に量産型戦闘員は不可欠でありマス!」と朽木が目を輝かせる。 咲「悪ってオイ……」 朽木は、「あの人もなんだかんだ言ってオタクですなぁ……」と、原口を評した。 「ではさっき部室にいた黒いマスクは“三連星”ってことデスカ!ウヒョー!誰が踏み台になるんですかねぇ!」 話がドンドン暴走していく朽木は無視して、笹原は、「荻上さんを助けないと」と歯ぎしりした。 その後ろで朽木は、ガサガサとカバンから何かを取り出しはじめた。 咲「アンタこんな非常時に何遊んでんのよ」 朽「イヤイヤ誤解はナッスィングですよー」 朽木が持っていたのはトランシーバーだ。運動関係サークルが常用する無線の周波数はすでに知っているというのだ。 「うちの大学はよく駅伝出てるデショ。この回線を知ってると、連絡内容が聞こえたりして面白いんですヨ」 驚かされる咲、というかあきれていた。(コイツ盗聴まで……) 笹原「なるほど、相手も大人数だから携帯じゃ連携とりずらいし。無線を使いそうだよね」 咲「でもクッチー。あんたいつもそれ持ち歩いてんの?」 朽木は都合の悪そうな質問はスルーしつつ、鼻歌を歌いながら通信を傍受した。 「それほど人数はないみたいですな。サークル棟自体は見張りが少ないですニョ」 「そう…」咲はフーとため息をつくと、「あいつら何とかギャフンと言わせて、荻上取り戻さなきゃね」と呟き、笹原は無言でうなづいた。朽木はまた鼻歌を歌っていた。 予告編 ※BGM:ガクト(嘘) (カミーユ調で)「ハラグーロ!! 貴様はオタクの浪費の源を生むだけだ!!」 邪道SSの正統なる続編、望まれもしないのに登場!! “新現視研”に囚われた荻上奪還作戦が始まる!! 「Zせんこくげんしけん/オタの鼓動は萌」